タイ・バンコクでは今、ゴミの不法投棄が深刻化している。そんなか、問題解決に向けて立ち上がった、日本企業の取り組みを密着取材した。
■マットレスを6人掛かりで…不法投棄が深刻
世界中から多くの観光客が訪れる東南アジアの国・タイ。
「微笑みの国」とも呼ばれているが、その由来の一つに子どものころから相手に対して怒らないように、教えられていることがある。
女性:「(Q.大変ですか?)大変です」
しかし、怒っていた。その理由が、ゴミの不法投棄だ。今、タイでは、ゴミの不法投棄が大きな社会問題となっている。
川底から引き上げられたマットレスはかなり重く、6人掛かりでようやく引き揚げることができた。
清掃活動にあたる人:「(Q.大きなゴミはよく見つかる?)毎日です。時々、ソファーや棚もあります。色々な物がありますよ」
■ゴミが集まる場所を発見すべく…“初実験”
この現状を打破しようと、日本の企業が立ち上がった。
タイの大学と協力して、効率的なゴミ回収に向けた新たなシステムを作り上げた。
そもそもゴミは、流れるうちにまとまっていく特性があるという。そこで、位置情報を発信するボトルを川に流し、ゴミが集まる場所を発見しようというものだ。
今回、追跡できるかの初実験が行われた。
タイ技術系ベンチャー企業「ATI」 原田東悟さん(24):「流します」「(Q.浮かんだ状態みて、どうですか?)一応、アンテナが見えているように、アンテナが水面から出ています。大丈夫です」
3本のボトルを川に流した。そして6日後、果たして、ボトルは発見できるのか?
■来月にはボトル増やし…半年間にわたり追跡
タイで社会問題化しているゴミの不法投棄。日本の企業などが、ゴミを追跡するための新たなシステムを作り上げ、今月、その初実験が行われた。
川に流したのは、位置情報を発信するボトル、3本だ。
タイ技術系ベンチャー企業「ATI」 長尾朗社長(65):「ちょうど向こうの船の線上に、棒に隠れているのですが。ちょうど、右手の辺りなんだよ」
ボトルを懸命に捜索。そして、位置情報のデータ通りの場所で、1本のボトルを発見することに成功した。
原田さん:「ありました!」
しかし、他の2本はデータ上でおおよその場所は特定したが、ぬかるんでいたため、発見・回収することはできなかった。
長尾社長:「1つの経験として、次回収する時は、どういう準備が必要かということを考えていこうと思います」
来月には流すボトルの数を増やし、半年間にわたり追跡を始める予定だという。
■ゴミ増え続ける背景に…中国の“方針転換”?
タイで広がるゴミ問題の背景を見ていく。
バンコクでは毎日、およそ9000トンのゴミが回収されている。ちなみに東京23区では、毎日およそ21万トンのゴミが回収されているが、1人あたりの一日のゴミ排出量は東京は839グラムであるのに対し、タイのNGO団体によるとバンコクでは1.2キロと東京を上回るという。
そんななか、国際環境経済研究所によると、タイはプラスチックなどの廃棄物をこれまで中国に輸出し処理をお願いしてきた。
しかし、2017年に中国が廃棄物輸入を規制したことにより、タイ国内の廃棄物の行き場が失われてしまった。
さらに、中国が廃棄物輸入を規制したことによって、日本をはじめとした先進国が廃プラ・廃棄されたプラスチックなどの輸出先をタイなど東南アジアの国々に頼るようになった。
こうして、廃プラの輸出先を失った一方で、廃プラの輸入国となったタイは、海洋への廃プラ流出量で世界第6位となってしまった。
現地メディアによると、こうした状況を打破すべくタイ政府は、廃プラの輸入を段階的に削減していく計画で、2025年には全面的な禁止を目指しているという。
■“解決策”プラを…“僧侶の袈裟”にリサイクル
一方で、タイでは、ちょっと変わった方法でのゴミ問題の解決も目指している。
ロイター通信によると、バンコクの隣にあるサムットプラカーン県のジャークデーン寺院では、ペットボトルなどのプラスチックをポリエステル繊維にリサイクルし、そこから僧侶たちの袈裟(けさ)を作っているという。
すでに800着の袈裟が生産されていて、1着当たりおよそ8000円から2万円で外部にも販売もしているそうだ。
この取り組みには、リサイクルということ以外にも、寺院が率先してゴミ問題に取り組む姿勢を見せることで、94%が仏教徒であるタイ国民にゴミ問題への意識を高める役割も果たしているという。
■ポイ捨てゴミは「忘れ物」?…持ち主に送り返す
また、BBCによると、バンコク近郊にあるカオヤイ国立公園では、これまた一風変わったゴミ対策が行われている。
それが、ポイ捨てされたゴミを持ち主に送り返すというもの。公園の訪問者は住所を登録する必要があるため、ポイ捨てされたゴミが見つかった場合、これらを段ボールに詰めて「カオヤイ公園に忘れ物です」とメッセージを添えて“持ち主”に送り返しているというのだ。
この取り組みを始めたタイのアルカ環境相はSNSで、「公園から持ち帰っていいのは、思い出と写真だけ。残していいのは、足跡だけ」とコメントしている。
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からの記事と詳細 ( タイで“ゴミ不法投棄”深刻化 問題解決に向け…日本企業の“取り組み” 追跡に密着[2023/01/28 17:00] - テレビ朝日 )
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