あらゆる資源の大消費地である首都・東京。環境への配慮としてリサイクル促進は欠かせないが、その前提となる「分別」に関し、オフィスビルなどから出る事業系ごみに粗さが目立つという。背景には家庭ごみに比べ、職場でごみを捨てるときに個人の責任感が希薄になるなど、意識の問題があるようだ。「分ければ資源 混ぜればごみ」のモットーのもと、企業側が自ら啓発活動に取り組む動きも出てきた。
テナント各社にリサイクル周知
26日、新宿区のビル一室。ペットボトル(500ミリリットル)約2万本分からなるティラノサウルスの骨格標本が、その全容を現した。東京芸大出身者らでつくるアート団体のメンバーが、熱を加えて変形させるなどし、約1カ月半をかけて制作。恐竜の化石は長い年月をかけてペットボトルの原料でもある石油になることから、時代を超えた「資源循環の輪」を表現した。
材料のペットボトルは、住友不動産が保有する同区内のオフィスビル3棟から回収されたものだ。オフィスワーカーのリサイクル意識向上を目的に、同社は昨年3月、テナント各社の担当者に、キャップやラベルを外して水でゆすぐなど、リサイクルに適した状態にして捨てるよう周知した。キャップ、ラベル、ボトルと個別に捨て口があるボックスも設置した。
昨年12月までの間、ペットボトル(500ミリリットル)600万本相当の約115トンが回収され、一部を恐竜アートに活用した。ビルから回収されたペットボトルのうち、飲み残しや異物の入っていないものは周知前の同2月時点では70%だったが、12月には90%に増加。また、キャップやラベルが外されているものは10%から30%になったという。
同社担当者は「今回を契機として、オフィスビルの資源循環に向けた取り組みがさらに広がっていくことを期待している」と話す。
自宅と会社で異なるルールも
家庭ごみに比べ、オフィスビルなどからの事業系ごみは、分別が徹底されていない実態があるとされる。
都環境局によると、要因として、職場では個人のリサイクル意識が低下することが考えられるという。自宅と会社、それぞれの所在地で分別ルールが異なる場合があり、そうした煩雑さも一因として挙がる。
適切な対応を促すため、都は今年度から、都職員らを分別やリサイクルの専門アドバイザーとして各企業などに派遣する事業を本格的に開始した。新型コロナウイルス禍の現状では派遣実績はまだ少ないが、今後も継続していく予定だ。
都は令和3年9月に改訂した「資源循環・廃棄物処理計画」で、プラスチックごみの焼却量を12年度までに平成29年度比で4割減とするなど、各施策の数値目標をまとめた。関係者によると、現状、焼却量に関しては目標達成には程遠い状況という。
ごみを適切な状態にして廃棄し、リサイクルの流れにしっかりと乗せることができれば、焼却量削減の一助ともなる。都側は、今回のような企業による啓発活動について「行政のアプローチにも限界があり、非常に有効だ」と歓迎。「資源の大量消費は、ひいては気候変動や生物多様性の損失につながる。1人1人の意識変化と行動が抑止に効果があることを、今後も地道に訴えていきたい」としている。(中村翔樹)
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住友不動産では27~29日、新宿区の新宿住友ビル三角広場で、恐竜アートを展示するほか、正しい分別方法を学ぶリサイクル教室などの啓発イベントを開催する。参加は無料。詳細は同社ウェブサイトへ。
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