高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場選定を巡る文献調査が進む後志管内寿都町と神恵内村で、原子力発電環境整備機構(NUMO)が「対話の場」を始めてから2年が過ぎた。
核ごみは無害化に10万年かかる。地震の多い日本で地層処分への不安は根強い。安全性の確保といった根本的な問題について、道内全体で賛成派、反対派双方が幅広い議論をするのが筋だ。
だが対話の場ではまちの将来像もテーマにする。処分事業を行うNUMOが振興策の議論に関与し、寿都では地域の分断が進んだ。
地域振興策は本来、処分事業と関係なく国が講じるべきものだ。疲弊した地域の弱みにつけ込むかのような手法は見直すべきだ。
対話の場は寿都町で15回、神恵内村で13回開催した。
寿都では反対派はほとんど出席していない。NUMOが運営に関わるのは公平性の観点で疑問だとの声も上がっている。
事実上、賛成派中心の「説明の場」と化してはいないか。
昨年、幅広い専門家を招いて開くとしていたシンポジウムも、実現していない。町民全体を巻き込んだ議論が不十分だ。
2021年10月の寿都町長選では片岡春雄町長が6選を果たしたが、反対派候補と接戦となり、分断の深さを浮き彫りにした。
審議の透明性にも問題がある。寿都では審議の傍聴ができず、神恵内は村民に限られる。北海道の将来を左右する課題を話し合う以上は、地域住民以外も聞けるよう公開するのが当然だろう。
鈴木直道知事は文献調査終了後の第2段階となる概要調査への移行に反対している。知事の同意がなければ調査の継続は困難だ。
そうした中、神恵内村はNUMOの仲介で、村内でウナギ養殖を計画する大阪市の会社と連携協定を結んだ。調査継続の足がかりにしたいNUMOの思惑が透ける。
長崎県対馬市で文献調査検討を市に求める動きが出てきたが、今のところは寿都町と神恵内村以外に名乗りを上げた自治体はない。
政府は最終処分に関する基本方針の改定案を近く閣議決定する。
振興策を拡充し、関心を持つ市町村との間に「協議の場」を設ける。100以上の自治体に協力を呼び掛ける方針だ。
鈴木知事は寿都町の文献調査応募が浮上した当初「頬を札束でたたくやり方だ」と国を厳しく批判した。その手法を全国に広げるような進め方は極めて問題だ。
からの記事と詳細 ( <社説>核ごみ対話の場 振興策の議論は筋違い:北海道新聞デジタル - 北海道新聞 )
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