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Saturday, November 26, 2022

〈社説〉核ごみ調査2年 処分の行方見えないまま|信濃毎日新聞デジタル 信州・長野県のニュースサイト - 信濃毎日新聞デジタル

 原発から出る高レベル放射性廃棄物(核のごみ)の最終処分場の選定に向け、北海道の2町村で調査が始まって2年が過ぎた。

 全体で20年を見込む選定プロセスの第1段階に当たる文献調査だ。予定した期間は2年程度。第2段階の概要調査に進む見通しは立っていない。

 岸田文雄政権は8月、原発推進への政策転換を表明した。だがエネルギー供給の充実を強調するばかりで、核廃棄物の問題は脇に置かれたような状態が続く。

 原発を運転する以上、処分場は不可欠だ。極めて高い放射線を出し、数万年以上の隔離が必須の廃棄物を生み出す負の側面を、直視しなければならない。

 文献調査は地震や火山の記録を調べる。ボーリングして地質などを調べる概要調査の期間は4年。最後の精密調査では14年ほどかけて地下施設を造り、処分場の要件を満たすかどうか確かめる。

 調査に手を挙げたのは道西部の寿都(すっつ)町と神恵内(かもえない)村だ。過疎と高齢化に悩む中で、調査に伴う交付金に期待した面が大きい。

 第1段階で最大20億円、第2段階に入れば最大70億円が交付される。調査が先に進まなかったとしても、返還の義務はない。

 この仕組みには、途中で降りられなくなるのではないか、といった懸念の声がある。他に有望な産業もなければ、交付金と引き換えに受け入れ以外の選択肢が事実上奪われていく可能性もあろう。

 寿都町では、賛成派と反対派に住民が分断された。原子力発電環境整備機構(NUMO)は「対話の場」を設けたが、住民同士の争いを避けたい雰囲気も広がり、議論は盛り上がっていない。

 北海道知事は一貫して調査に反対の姿勢を示している。核のごみを「受け入れがたい」とする道条例の存在がある。

 本来は広く国民全体で考えねばならない課題を北海道の過疎地に押し込んでしまっている。政府はまず、そのいびつな現実を生んだ手法を再考すべきではないか。

 核廃棄物を考える上で避けて通れないのは、使用済み核燃料を再処理して繰り返し使う「核燃料サイクル」の行き詰まりだ。

 再処理して作る混合酸化物(MOX)燃料は使い道が限られ、行き場のない使用済み燃料が各地の原発にたまり続けている。

 海外では再処理せずそのまま埋める「直接処分」が主流だ。日本も政策の行き詰まりを認め、再処理を前提とした核廃棄物対策を根本から見直す必要がある。

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