Pages

Thursday, August 19, 2021

路上の「ごみ拾い」SNSでシェア 専用アプリ、利用者3倍に - 神戸新聞

 おしゃれな「映え写真」ではなく、路上のごみをスマホでパシャリ。「いいね」の代わりに「ありがとう」ボタンをクリック-。人気の会員制交流サイト(SNS)の一つに「ごみ拾い専用」アプリがある。10年前に登場し、新型コロナウイルス禍で利用者が急増中だ。まちの美観づくりに活用する自治体も出てきた。(井上太郎)

 アプリの名称は「ピリカ」。アイヌ語で「美しい」を意味するといい、同名の株式会社ピリカ(東京)が2011年に開発し、国内外に配信する。

 仕組みはシンプル。道ばたに落ちているごみを見つけたユーザーが、その様子を撮影する。ごみを拾い、短いコメントを付けて画像を投稿すると、位置情報を基に自動でマップ上にその場所が記録される。

 どこで誰がどんなごみを拾ったかが一目で分かり、ツイッターなどで賛同を示す「いいね」のように「ありがとう」ボタンを押したり、コメントを送ったり。ねぎらい合って交流する。

     ◆

 「今朝も朝日がきれいでした。(中略)タバコの吸い殻118本」

 6月下旬の早朝、神戸市中央区のメリケンパークで、会社員内波知子さん(57)=同市=が、路上に散らばる吸い殻や空き缶の写真を10枚ほど撮って投稿すると、約50人から「ありがとう」が集まった。

 内波さんは知人の紹介で5月下旬からピリカを使い始めた。コロナ対策の緊急事態宣言で勤務先が休業し、「一時的なつもり」で始めたが、「蓄積、継続するとやりがいを感じるし、反応があると達成感も大きい」と、勤務を再開した後も週に2、3日ペースで続けている。

 互いに「フォロー」してつながる機能はないが、「コメントをくれ続けるモチベーター(やる気を引き出してくれる存在)みたいな人もいるんです」。この日も「今朝ピ(ピリカ)お疲れさま」とコメントが届き、頬を緩めた。

 ピリカによると、コロナ禍前と比べ、定期的に投稿する「アクティブユーザー」は昨年11月以降の半年間で約3倍に増えた。

 散歩やランニングをする人がごみ拾いを始めるきっかけになったとみられる。兵庫県内では明石市から神戸・阪神間の沿岸部を中心に多くの投稿が寄せられている。

■自治体も催し代替で活用「企業・団体版ピリカ」

 兵庫県西宮市は今年2月、「企業・団体版ピリカ」の運用を始めた。登録した団体や個人のごみ拾いの状況が分析できるようになった。

 担当者によると、同市は約30年前から市民7万人規模の清掃イベントを年に2回続けてきたが、昨春以降は中止か縮小された。「個人や少人数で不定期にごみを拾ってもらえると、ポイ捨てや不法投棄を監視する目として心強い」と期待する。

 ボランティア団体「夙川の環境をよくする会」の酒匂景昭(さこうかげあき)さん(84)も「ピリカでつながった男性が入会してくれた」と、輪の広がりを喜ぶ。

 企業・団体版には大手企業が名を連ね、登録した社員らが清掃を続ける。県内には、社員が近隣の海岸を清掃して投稿する釣り具用品チェーン店もある。

 ピリカの広報担当者は「SDGs(持続可能な開発目標)に取り組む一環で、奉仕活動が可視化されて企業PRにもつながる」としている。

【アプリ開発者の社長・小嶌さんに聞く】

 ピリカを開発したのは、神戸市内で小学生から高校卒業までを過ごした小嶌(こじま)不二夫さん(34)。ピリカ社を設立した社長だ。学生時代に環境問題への関心が高まり、SNSと結びつける発想に至ったという。

 -開発のきっかけは。

 「大学院を休学して世界一周の旅をしたとき、アマゾンの奥地や砂漠の真ん中でもポイ捨てのごみを見た。一つ一つは小さくても、世界中で足し合わせるととんでもなく大きな問題だと思った」

 「SNSを活用すれば、ボランティア人口が増え、ごみも多く回収できると考えた」

 -利用者が増えている。

 「ごみ拾いは人目につきにくく、活動が広がりにくい。記録が残り、反響も届くSNSの仕組みは相性がいい。量を競ったり、拾うたびに一句詠んだりと、ユーザーが多彩な楽しみ方を見つけてくれる。今は在宅勤務が増え、地域社会に向き合う人が多いことも背景にあるのでは」

 -今後の課題は。

 「こうしたごみ拾いが環境問題の解決につながっているか、科学的に測る『物差し』がいる。画像解析技術を使い、ポイ捨ての分布やマイクロプラスチックの海洋流出などを可視化できるようにしたい」

Adblock test (Why?)


からの記事と詳細 ( 路上の「ごみ拾い」SNSでシェア 専用アプリ、利用者3倍に - 神戸新聞 )
https://ift.tt/2W9ueay

No comments:

Post a Comment