写真提供:ビビッドガーデン
株式会社ビビッドガーデンが運営する「食べチョク」は、消費者と生産者をネットで結ぶオンライン直販所。消費者には高品質の商品を、生産者にはこだわりに見合った報酬をと、双方がハッピーになる付加価値を提供しています。また、コロナ禍でのお取り寄せ需要も手伝って、大きく伸びているサービスでもあります。
今回お話を伺ったのは、ビビッドガーデン創業者で代表取締役社長の秋元里奈さん。第一次産業に新風を吹き込む気鋭のビジネスパーソンとして、各種メディアでも脚光を浴びている方です。彼女はどんな思いで生産者に伴走し、このコロナ禍を駆け抜けてきたのか。若き経営者へのロングインタビューです。
押し寄せる生産者からの悲痛なSOSに、経営者として下した決断
──新型コロナウイルス感染症(以下、「コロナ」)の影響をうけ、2020年は食べチョクにとって劇的な年になったとお聞きしています。
秋元里奈さん(以下、敬称略):2020年の2月、生産者さんから最初にSOSをもらったときにすぐ感じたんですよね。コロナで、生産者・消費者どちらも状況が一気に変わるなって。
──なぜそう感じたんですか?
秋元:今まで飲食店などに卸していた生産者さんは売先がなくなり、大量の在庫を抱える方が出てきました。食べチョクに寄せられる生産者さんの新規申請の数も、とんでもないことになり……。
──具体的にはどれくらいの数字だったのでしょうか。
秋元:もともと毎月数十件くらいの申請だったのが、1カ月に600件ぐらい申請が来るようになりました。
──うわっ、凄まじい。
秋元:なので社員を集めて「このコロナ禍で困っている生産者さんの販売支援を、全社一丸となってやっていきます!」と2月末に宣言し、そこからはとにかく販売先を増やそうと、怒涛の勢いで突き進んでいきました。
──とはいえ販売先だって簡単に増やせるものではないですよね?
秋元:消費者も家で過ごす時間が長くなるにつれ、お取り寄せの機会も増えます。また、「どうせ買うんだったら人に貢献できる買い方を選びたい」とニーズが変わりつつありました。
2016年から食べチョクでやってきた産直ビジネスがたまたまそこにハマったというか、困っている生産者さんを支援しつつ、消費者にも価値を提供できたんですよね。
──なるほど。ただ、生産者・消費者の両方の利用者数が増えていく状況で、オペレーションを回すというのは大変そうです。
秋元:2020年の3、4、5月で流通額がものすごく伸びました。2月から5月で流通額が35倍になったんですよね。
──最初の緊急事態宣言の頃ですね。って、35倍ですか! うれしい悲鳴……とはなりませんよね。素人目にも、業務がめちゃくちゃなことになると容易に想像がつきます。
秋元:当たり前なんですけど、流通額が35倍になるとお問い合わせも激増します。当時お問い合わせ対応の社員は1人だったので、もう全然間に合わなくて。多い日だと1カ月分の注文が1日で入ったりするので、私も含めて全社員がお問い合わせ対応をするという毎日でした。
事務処理も全然追いつかないし、同業他社さんも似たような状況で、中には注文を止める企業もありましたね。
──自社業務がパンク寸前なことを考えれば、致し方ない対応です。
秋元:でも、それこそ生産者さんが困って食べチョクを頼ってきているのに、私たちの都合で止めるわけにはいかないと強く思ったんです。なんとしても業務を間に合わせるぞと、システム開発の優先順位もガラッと変えて、とにかくオペレーションを安定稼働させることを最優先にしてなんとか回していました。
「ピンチはチャンス」と簡単に言うけれど
──システムもそうですが、人も増やさないことには絶対に回らないですよね?
秋元:ほんと人手は「かき集めた」という感じですね。それこそ社員に「自分の友達とか、とにかく信頼している人に声をかけて呼んできてください!」とお願いし、彼らにアルバイトや業務委託として手伝ってもらいました。
──それと、消費者サイドからのお問い合わせだけでなく、生産者サイドもフォローされていたわけですよね。
秋元:もともと小規模農家さんの利用を想定していたので、発送業務が1日に1,000件を超えるなんてことはありえないと思っていたんです。でも、注文数がそれぐらい入ってしまうケースがあり、生産者さんからは「注文が入りすぎて対応が追い付かなくて、逆にどうしよう?」と相談され、受付システムを改修して受注数を制御できるようにしました。
──注文がいきなり1,000件なんてきたら、梱包業務だけで1日が終わっちゃいます。
秋元:特に新規の生産者さんは、今回から初めて直販をするという方も多くいらっしゃっいました。「そもそも価格をどうやって決めたらいいんだろう? 梱包はどうすればいい?」と悩まれている方も多くて。そういったフォローもあったので、ものすごいバタバタだったというか。
──相当厳しい日々でしたね。「ピンチはチャンス」と言葉で言うと簡単ですけど、食べチョクではピンチを凌いで凌いで凌いで、振り返ってみると結果的にチャンスになっていたというところでしょうか。
秋元:仰るとおりです。後から数字だけ見ると、最後は2019年対比で流通額42倍で着地しました。
──おお、後半さらに伸びたんですね……!
秋元:「業績がものすごく伸びましたね」なんて外から言われたりするんですけど、当時は必死すぎて、余計なことは何も考えられない状態で。とにかく「どうしようどうしよう、でもがんばって乗り切るしかない!」現場ではそんな会話ばっかりでしたね。あの頃いたメンバーは、多分当時の記憶がほとんどないと思います(笑)
起業前、農家の娘として抱いた危機感
──そもそも、秋元さんはどういった経緯で今の会社を立ち上げたのですか?
秋元:起業する前は、新卒で株式会社ディー・エヌ・エーに入社して、ITサービスの立ち上げやマーケティングなどをやっていました。
──あれ、農業とはまた対極の業界ですね。
秋元:実家が農家だったので、農業そのものはずっと身近にありました。ただ、私が中学生の時には廃業していて、社会人になってから久しぶりに実家に帰った時に、昔はきれいだった畑が耕作放棄地になって荒れてしまっていたんですね。「なんでうちは農業を辞めちゃったんだろうな」と疑問に思ったのがきっかけです。
──それでふたたび農業に目を向けるようになったんですね。
秋元:そこからいろいろな農家さんと会うようになってお話を聞くと、皆さん同じような課題を抱えていました。しかも、「大変だから子どもには継がせたくない」と話す方が結構いらっしゃったんです。私も親から「農業は継ぐな」とずっと言われてきたので、自分のことと重なって……。この状況を何とかしたいと思うようになり、退職して起業しました。
──会社にいてはできなかったのでしょうか?
秋元:副業も考えたんですけど、片手間ではできないなと。それと、農業系の会社へ転職するよりも自分で責任を持って仕事を進めていきたいと思っていたので、起業しか選択肢がなかったっていう感じですね。
──起業間もない頃はどのように仕事を進めて行ったんですか?
秋元:まず相手が何に困っているかを知らないと解決策も出てこないので、日本全国の農家を回ってヒアリングしました。
──どんな意見や課題が出てくるんでしょうか?
秋元:例えば「こだわって作っても高く売れない」とか、「通年雇用は難しいけれど繁忙期には人が足りなくなっちゃう」とかですね。あと、後継者不足で地域の農家がどんどん廃業していくので農地が荒れてしまったり、逆に新規で就農したい人たちはなかなか農地を貸してもらえなかったり。
──その過程で「生産者」と「消費者」を直接結ぼうとなった。
秋元:はい。課題を分析しているうちに、結局生産者さんが儲からないことには他のどんな解決策を提示しても駄目だというところに帰着しました。なので、少なくとも頑張りに見合ったものがしっかり評価され、ちゃんと対価が得られる世界を作ろうと考えたんです。
──そこで直販をお手伝いするというビジネスを選んだんですね。
秋元:もちろん、消費者サイドに需要があるかも考慮して最終的に判断し、「産地直送EC」である食べチョクの立ち上げに至っています。
他企業が農業分野から撤退する中、勝算はあったのか
──とはいえ、ネットで直販するというのは目新しいものではないですし、競合サイトも当時すでにありましたよね?
秋元:競合サイトに関してはあんまり気にしたことがなかったですね。というのも、当時はそこまで強かったり大きかったりするところがなかったので。
──では、それなりに勝算はあったのでしょうか?
秋元:農作物や海産物をネットで直販するというビジネスモデルは2010年頃からあるんですけど、他の企業ではうまくいかなくて撤退されるところが多かったんですね。でも私は逆に「今こそ良いタイミングだな」と思ってスタートしました。
──普通は怖気づきそうなところですけど、あえて逆張りをしたってことですか?
秋元:いいえ、いくつか理由がありました。スマホが普及して農家さんも普通にネットでやりとりするようになったこと、フリマサイトなどでも野菜の売買がされるようになったこと、消費者サイドも「C to C」で個人からものを買うことに対して抵抗がなくなってきていることなど、大きく時代が変わっていました。
──時代の変化を冷静に分析されていたんですね。
秋元:しかも、当時はITに知見のある人が作っている直販サイトというのは、あまり見かけなかったと思います。私はIT企業出身なので、なるべくコストをかけずに細かい検証を積み重ねながら、最短距離でブラッシュアップする方法を知っていたので、そこは1つの強みになるなと考えていました。
──時代の歯車と、秋元さんのやりたいことや強みがガチャリと噛み合った。
秋元:タイミングは運の要素も大きいです。今だと類似のサービスが乱立していて参入しても難しいと思います。早すぎず遅すぎずのタイミングでスタートできたのは、ほんとに良かったと思います。
着用1日目から効果絶大! Tシャツが呼び込んだ数々の奇跡
──秋元さんといえば、いつも自社のTシャツを着ているイメージがあるのですが、なにかきっかけがあったんですか?
秋元:マルシェのイベントで野菜を販売するとなったときに、宣伝のためにTシャツを作ることにしたんです。枚数を頼まないと割高じゃないですか。スタッフが着るだろうし、1枚1,000円くらいになるし、とりあえず30枚で発注しちゃったんです。でも、マルシェが終わっても袖を通してないTシャツが大量に余っている状況だったんで「どうしよう……」となり。
──たしかに、もったいないですね。
秋元:「だったら広告効果で3万円の元を取ろう!」と考えて、最初は「まぁこのTシャツを一週間も着つづけてたら効果がでるかなぁ」くらいの気持ちで実行したら……なんと初日から反応があって。すれ違う人が「『食べチョク』って書いてあったけどなんだろう?」ってヒソヒソ話してたり、レストランで話しかけられたりとか。
──すごい、わざわざ話しかけてくる人まで……。
秋元:お店でシェフの人から「これは何のTシャツですか?」と聞かれたこともありました。普通、お店を訪問して「良いお野菜があるんですけど」とこちらからお話すると、「客のふりをした営業か」って警戒されて嫌がられるんですけど……。
──この場合、向こうから話しかけてきてますもんね(笑)
秋元:そうなんです。だから「自社のTシャツなんですけど、食材を生産者さんから直接買えるサービスやってます」と説明すると「おっ、それいいですね!」となり、そこから飲食店向け仕入れサービスのお取引をスタートさせたレストランもありました。その時に「Tシャツってすごい見られてるんだ。想像以上に効果があるぞ!」って。
──確かに、効果絶大だ!
秋元:途中からTシャツの背中にQRコードをつけてスマホで読み取れるようにしたんですけど、アクセス数を計測すると「あ、今日5件も読み取られてる!」とわかったり。
──あははは、広告施策の効果測定も明確過ぎる。
秋元:あとは副次的な効果もありました。それまでは投資家さんに事業のプレゼンをしても、あまり取り合っていただけなかったんですよ。前職が服装自由だったこともあって、当時の私はフリフリの服を着たり、髪の毛もロングヘアーで巻いていたりしたんです。
──ちょっとこう、フワフワしてるように見えちゃうかもしれませんね。
秋元:相手から「君は本気でやってるの?」と言われたり、「起業って大変だよ」と諭されたりして。心の中では(いや~知ってるよ)って思いながら、「こういう思いで始めました」と15分30分かけて話して、ようやく本気度が伝わるみたいな……。
それが「毎日食べチョクTシャツを着てるんですよ」「出かける時も友達と遊ぶ時もこれです」というのをまず説明すると、「あ……。君、ガチだね」って。今まであんなに疑われてたのに、一発で信用されます。
──人は見た目で判断されている!
秋元:それで脱げなくなりましたね。最初の資金調達のときは、個人投資家の方から4千万円集めました。今だから言えますけど、投資してもらえたのは多分このTシャツを着てたからだと思います(笑)。
──すごい、3万円の呼び水が4千万円の奔流になっている!
秋元:寝間着もこれなので365日24時間Tシャツ状態で、気付いたらもう3年半が経っちゃいました。
──でも、農家も回るわけですから厳冬の雪国などにも行くんですよね。その時はどうしてるんですか?
秋元:上着は一応羽織ります。風邪ひくと困るんで(笑)でも、ロゴが見えるように上着のファスナーは開けてます。
あと、実は冬の方がTシャツはボーナスタイムなんです! 夏ならTシャツを着てるのは当たり前ですけど、真冬にお店に入った時、上着をソッコーで脱いでTシャツでいると、もう100%声をかけられるんですね。なので、冬は着ないとほんとにもったいないというか。
──いやはやすごい、徹底してる。そりゃみんな言いますよ、「君ガチだね」って。ちなみに、社員さんもいつもTシャツを着ているんですか?
秋元:いえ、社員は服装自由です。最近面接を受けた方に「Tシャツは毎日着なければいけないんですか?」って聞かれましたけど(笑)。
(ロマン+ソロバン)×スピード=食べチョクの強み
──食べチョクの大躍進には「お取り寄せ需要が増えたから」以上の理由があると思うのですが、大きく業績を伸ばせた要因は何なのでしょうか?
秋元:2つあると考えていて、1つめは、「ロマンとソロバン」ってよく言うんですけど、「経営的な考え方と想いのバランス感」。2つめは「スピード」。それらの掛け算の結果だと思っています。
──経営的な考え方、といいますと?
秋元:食べチョクでは生産者さんの登録数を増やすよりも、1人あたりの収益がちゃんと伸びているかを意識しています。
──そうなんですか? 生産者が増えれば、流通額が増えて商が潤うのかなと単純に思ってしまうのですが。
秋元:単に生産者さんの数が増えるだけだと、1人あたりの売り上げって減っちゃうんですよね。
──あ、そうか。分母である生産者の数が増えても、利用する消費者の数が同じなら分子である流通額も同じで、逆に1人あたりの収益が減っちゃうんだ。
秋元:そうです。流通額の伸び以上に分母を増やさないというのは、結構ポイントですね。生産者さんにしてみれば、自分の売り上げが一番大事な指標ですし、売れなくなったら他のプラットフォームに移ってしまいますから。
「想い」の部分ですと、お問い合わせ対応ですね。
──2020年は社員の総力戦で対応されていましたが、肝の部分でもあるんですね。
秋元:うちでは「おせっかいなプラットフォーム」をキーワードの一つにしています。生産者さんが仕事に集中できるように、苦手なことをプラットフォーム側で引き受けるという考え方です。
例えば、購入者の方から厳しいご意見をいただくこともありますが、食べチョクがまず受けるようにしています。これが生産者さんが直接受ける仕組みだと、畑や海に出ていて即対応が難しいときもありますよね。でも、購入者の方にしてみれば、返信が遅ければ不安が募ってしまう。また、生産者さんも、厳しい意見を直で見るとものすごく傷ついちゃうんです。
──配達時のミスなど、生産者に責任がない場合もありますもんね。
秋元:他のプラットフォームだと「基本的には当事者間で交渉してください。何かトラブルがあったときだけ間に入ります」というスタンスのところが多いです。でも、どうしても対応が苦手な生産者さんはいますし、プラットフォーマーが存在する価値って、そういう手間を省けるところにもあると思いますね。
──「スピード」の方はどうでしょう?
秋元:圧倒的なスピードで施策を打って、常に「ファーストムーバー」になることを意識しています。例えばコロナで大変なことになったとき、それこそまだ「応援消費」なんて言葉がなかった頃に「生産者さんを応援しよう!」とサイトに特設コーナーを設けたのは、私たちが最初だったと思います。
他社さんが似たような施策を後から行っても、すぐに次の一手、その次の一手と展開していっていました。
──真似するだけでは、うまくいかない会社もきっとありますよね。
秋元:機能を真似することは誰でもできますが、真似をしている時点で半歩遅いですし、こちらは真似されても追いつくのを許さないスピードで前に進むというのを意識してきました。ずっとそうしていれば、一生追いつかれることはないと思っています。
コロナ禍の中で見出した光とは
──コロナ禍では大変なことの連続だったと思いますが、その中でも何か気持ちが明るくなるような出来事はありましたか?
秋元:あえて良いところを挙げるとすれば、ビデオ会議が広まったことだと思ってます。自治体などの説明会でも導入されているので、生産者さんも普通に使ってるんですよね。
──ああ、それは確かにコロナがあったからこそ醸成された空気ですよね。
秋元:そこで、生産者さん向けにビデオ会議でスタッフが講習や相談を行う「食べチョク学校」というのをスタートさせました。そしたらそれが、生産者さん同士でも学び合う場になったんです。
──横のつながりも生まれるようになったと。
秋元:はい。「肥料はこの時期がいいよ」とか「トマトならこの梱包材がオススメだよ」とか、皆さん自主的な勉強会を行っています。しかも、リアルで会っていた時よりも地域を横断して頻繁に集まれるようになったので、そこはポジティブな意味でガラッと変わったところですね。
──それは良い変化ですね。他にも明るいお話はありますか?
秋元:「食べチョクがなかったら廃業してました」とか「食べチョクのおかげで今も事業を続けられています」という声をわざわざ届けに来てくる方や、お手紙をくれた方がいました。それと、「娘に継がせることにしました」と農家の方からお声をいただいたこともあります。
──わぁ、最高じゃないですか!!
食材のプロが語る美味しいレシピ?
──普段からすばらしい食材を目にされていると思いますが、例えば、野菜を手軽に取り入れられるレシピなどがあれば教えてください。
秋元:今でこそ自炊するようになったんですけど、私、料理はあんまりできる方ではなくて……。良い食材だと焼くだけで美味しくなるので、あんまり手をかけなくていいっていうか。塩コショウで焼くだけみたいな(笑)。
──ま、まあ、食材が良ければそれが王道ですよね。
秋元:最近「明日葉を餃子にいれると美味しい」って聞いて実際に作ってみたら、美味しいうえに包むのも楽しくてハマってるんですけど、これはあまり手軽ではないですよね……。
あっ、サラダ野菜セットはいつも大体冷蔵庫の中に入ってます。切って盛り付けるだけなので、すごく簡単に野菜を取り入れられますよ! 他には、ミニトマトをおつまみとしてそのまま食べたりとか。
──あ、ありがとうございました。食べチョクで扱っているようなこだわりの食材であれば、ほとんど手間を掛けずおいしくいただけるということですね。
日本の農業の未来はこれからどうなっていくのか
──さらに大きなトピックについてもお聞きしたいのですが、日本の一次産業は衰退の一途をたどっているように思います。この先どうなって行くとお考えですか?
秋元:たしかに日本の一次産業は問題が山積みですが、それはむしろ伸びしろだと思ってるんです。例えば、実は新規就農者って増えてたりするんですよね。
──ええ、そうなんですか!
秋元:そうなんですよ。全体が高齢化しているしトータルでは辞めていく人が多いので、統計上は減っているんですけど、若い人が興味を持ち始めています。それと、ヨーロッパでは「生産者=かっこいい」っていうイメージが普及しているんですが、日本でもそう捉える人が出てきていて、少しずつ変化しているなと思っています。
──うわぁ、それは良い傾向だ。
秋元:あと、よく聞くのは農業の大規模化ですかね。人が少なくなっていくので農地を集約させて効率よく農業を行うというのは、理にかなっていると思います。
でも一方で、生産者さんの中には「単純に作るのが好き」「この地域のこの景観を守りたい」など、いろんな思いを持つ方がいます。私はこの多様性を大事にしていきたいんです。
──仕事をするうえで、やりがいも大切にしている方たちですね。
秋元:はい。多様性のある農業っていうのは、日本の特徴の一つだと思っています。農地が細切れだからこそ、小規模の農家が発展してきたので。その人たちが辞めなくてすむよう、販路だけでなく、物流や資材購入なども含め、いろいろサポートに力を入れていきたいですね。
──山里にまだ残っている棚田なんて、まさにそれですよね。
秋元:そうなんですよ! 棚田の維持は機械化できないですからね。でもあれこそが日本ならではの風景だし、棚田が整備されているから山崩れが起きにくいなど、災害防止の意味でも役割があるんです。だから大規模化は決して悪いことではないんですが、小さい農家さんも置き去りにしちゃいけないって思ってます。
──食べチョクはそんな人たちにこそ寄り添う、と。
秋元:どうしても選択肢が限られていたり、そもそも情報にアクセスできなかったりする生産者さんもいるんですが、どんな方でもちゃんと経営ができるよう、もっと選択肢がある状態にしないといけないんですよね。販売する商品や売上の構成をどう組んでいくかなど、一般企業がやっているような意思決定もやりやすくなるように、土壌を整えていきたいという感じです。
──そうなると、ほんとに数え切れないくらいの「今後やりたいこと」が出てきますね。
秋元: 食べチョクの事業が大きくなればやれることは増えるんですけど、見える世界もどんどん広がっていきます。そう考えるとゴールもどんどん遠くなっていって、大体いつも「進捗1%」くらいなんです。
──これだけやってきてもまだ「1%」……。
秋元:ゴールに「たどり着く」っていうことはないのかもしれないですけど、大きくなる過程の一つとして、上場を直近の目標にしているというところですね。
──本日はありがとうございました!
インタビュー取材を終えて(後日譚)
取材の翌日、たまたまテレビをつけると早朝の生番組に秋元さんが出演しているではないか!(この人は一体いつ寝ているのだろう?)そこには取材時と同じく、エネルギッシュにコメントされている姿がありました。
この記事が出る頃も、きっと秋元さんは生産地やメディアへと出向き、食べチョクという種を撒き散らしながら日本中を飛び回っていることだと思います。
その種が全国各地に根を下ろし、芽吹き、そして上場という花が咲のはそう遠くはない未来に違いありません。
書いた人:飯炊屋カゲゾウ
1974年生まれの二女一男のパパ。共働きの奥さんと料理を分担。「おいしいものはマネできる」をモットーに、料理本やメディアで紹介されたレシピを作ることはもちろん、外で食べた料理も自宅で再現。家族と懐のために「家めし、家BAR、家居酒屋」を推進中。「双六屋カゲゾウ」名義でボードゲーム系のライターとして活動中。「子育屋カゲゾウ」名義で育児ブログも更新中。
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