予定のない昼下がり、散歩にでも行こうかと火ばさみと袋を持って家を出た。散歩に行くなら歩くだけではもったいない、ごみの一つでも拾ってくれと主人は言う。
たばこの吸い殻やマスク、ペットボトルもちらほら。数日ぶりの近所の公園の前はごみが散らかり、それを集め、中に入ると3人の小学生の女の子がベンチでお菓子を食べながら楽しそうに話していた。
私を見たのか1人の子が走っていき、ごみを拾って私のレジ袋にだまって入れてくれた。それを見た友達もごみを拾ってきてくれた。私はうれしくて、「こんな良い子は初めてよ。しっかり手を洗ってね」と言って公園を出た。
帰って主人に話すと、「涙出るなあ」と言った。主人は定年退職後、十数年、毎日、雨の日も風の日も、人に見られるのがイヤだからと早朝3時から4時間近くごみ拾いをしている。特に通学路と公園を、足が悪いので、いちいち、自転車をとめながら拾っている。帰ってきて風呂に入って、朝食をとる。
「ワシほど朝ご飯をおいしく食べている者はおらんやろなあ」と満足そうに言う。
主人に「寒い時期は、もう年なんだからごみ拾いは昼間にすれば。この間の女の子のようにマネしてくれる子も増えるかもよ」と言うのだが、ガンとして聞く耳を持たない。
確かにごみ拾いもやってみると本当に楽しい。主人は元気だからできるんだと、早朝のごみ拾いをやめさせるのは諦めることにした。
永井麻里(75) 東京都練馬区
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