岸田政権が、原発の高レベル放射性廃棄物の最終処分について「政府一丸となって」取り組むという方針を打ち出した。処分場の選定に向けて、地方自治体への働きかけを強める方向だ。政府が責任を持つのは当然だが、自治体に受け入れを迫ることはあってはならない。
今月公表された基本方針の改定案によると、関心を持つ地方自治体との「協議の場」を新しくつくり、課題や対応を議論する。検討状況を踏まえながら、調査の受け入れを段階的に申し入れるという。
現行の基本方針の下、経済産業省は17年に、地下300メートルより深い地層に廃棄物を埋める候補になりうる地域を示した地図を公表した。3年前から北海道の2自治体で文献調査が始まったが、後続は現れていない。
使用済み燃料からの高レベル放射性廃棄物以外にも、廃炉の解体物や福島第一原発で手つかずの「燃料デブリ」に至るまで、「核のごみ」はさまざまにある。それをどこに処分するかという重い課題にいまだに答えが出ていないのが、原発推進政策の不都合な現実だ。
各原発の敷地で使用済み燃料が置かれたプールは満杯に近づきつつあり、原発を動かせばいずれ保管場所にも困る。政府がいま最終処分計画にてこ入れを図るのは、これらの問題の解決に力を入れる姿勢を示すことで、原発を積極活用する政策転換への批判をかわすねらいがあるとみるべきだろう。
ただ、すでに大量の使用済み燃料がある以上、現実問題として処分場は必要だ。大量の電力を消費してきた大都市の住民も含め、国民全体の議論で合意を探らなければならない。
そのためには本来、原発を推進する経産省とは切り離し、独立性の高い組織で議論するのが望ましい。最終処分を定めた法律も見直す必要がある。
現行法の第1条には「原子力の適正な利用に資する」と書かれており、処分場ができれば、将来にわたる原発利用の正当化になりかねない。使用済み燃料も増え続けることになり、地元にすればごみが際限なく持ち込まれるとの疑念も拭えない。
また、この法律は使用済み燃料からプルトニウムやウランを取り出す再処理を前提にしている。先行する北欧などでは、使用済み燃料をそのまま埋める「直接処分」が主流になっている。実現の当てのない核燃料サイクルに固執せず、日本でも直接処分を現実の選択肢として位置づけるべきだ。
法律は20年以上も前に十分な議論なく成立した。原発事故の経験も踏まえ、根本から考え直すときに来ている。
からの記事と詳細 ( (社説)核のごみ処分 進め方 根本から見直せ:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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