久慈市で4月、可燃ごみからプラスチックの原料になるエタノールを生み出す実証プラントの稼働が始まった。運用会社は2025年度頃の実用化・事業化を目指しており、市は地元への経済効果や試験の成功による知名度向上に期待を寄せている。(冨田駿)
プラントは、敷地面積約2万5000平方メートル。可燃ごみをガス化炉で焼却し、発生したガスを精製。取り出した水素と一酸化炭素を微生物に与え、代謝物としてエタノールを生産する仕組みだ。
焼却するごみは、同市と洋野、野田、普代の4市町村で構成する久慈広域連合から1日あたり約20トンを受け入れる。1日の生産量は、約0・8キロ・リットルで、生産したエタノールは今後、化学大手の住友化学に提供。将来的にプラスチック製品の原料に利用し、使用後に廃棄された製品から再びエタノールを生み出すことで資源の循環を図る。
プラントを運用するのは、積水化学工業などで作る合弁会社「積水バイオリファイナリー」。エタノールの生産技術は、積水化学と米国のベンチャー企業が共同で17年に開発した。標準的なごみ処理施設が処理する量の10分の1にあたるごみを使い、実用化に向けた試験を進めている。
エタノールの生産コスト低減が課題で、25年度頃の実用化・事業化に向けて試験を継続。国内や海外でプラントの普及を目指す。積水バイオリファイナリーの戸野正樹社長は「新しい資源循環社会システムを実現し、重要な社会課題の解決に大いに貢献できる。エコノミーとエコロジーを両立させたい」と意気込む。
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久慈市は公用車に電気自動車を採用するなど資源循環型社会を目指す取り組みを進めており、プラントの建設計画を知って誘致に動いた。市内で複数の候補地を提示した結果、三陸沿岸道路侍浜南インターチェンジに近い同市侍浜町の市有林などが選ばれた。建設に地元企業も携わり、事務棟の建設資材に市産のスギも用いられた。
誘致の狙いの一つは、雇用創出など地元経済への波及効果だ。勤務する約60人のうち10人ほどは地元で採用され、他の従業員も新たに市を拠点に生活。固定資産税による税収アップも見込める。
新たな人の流れが生まれることへの期待もにじむ。関係者らによるプラントの見学が定期的に行われるようになれば、23年春に開業する道の駅「いわて北三陸」や市内の観光地への集客増につながるとの思惑も。市企業立地港湾部の大崎健司部長は「これまで市を知らなかった人に来ていただけるようになる」と話す。
技術の実用化には採算を確保するため、より多くのごみを処理できるプラントの新設が必要となる。実用化後のプラントの活用法は未定とされるが、市は、試験の成功を市の知名度向上に結びつけたい考えだ。大崎部長は「世界的な取り組みが久慈市からスタートしたと誇れるように成功してほしい」と願っている。
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