-11℃で生ゴミを凍らせることでニオイを抑えるゴミ箱「CLEAN BOX」。2019年に発表された初代モデルに続き、2022年9月5日に改良版の2世代目モデルが発売された。一般販売に先駆けて実施された先行予約販売では、目標額を超える8,000%の支援が集まった。臭いやすい生ゴミの保管だけでなく、赤ちゃんのオムツなどにも活用されているという。
販売するのは、自動車や工業製品のベアリングメーカーである中西金属工業。なぜ、同社が新コンセプトのゴミ箱を開発したのか聞いてみた。また、実際に家で使用した感想も紹介する。
新事業に挑戦する企業風土から、ベアリングメーカーがゴミ箱を製作
同社NKC BUSINESS DESIGN CENTERの長﨑 陸さんにCLEAN BOXが生まれた背景について教えてもらった。アルミサッシの車輪(戸車)で大きなシェアを持つ中西金属工業は、1924年創業。創業者は京都で「かんざし」の装飾金具を作る職人であったが、世界初の大量生産車として知られる「T型フォード」をきっかけに、ベアリングメーカーへと舵を切ったという。
「日本に数台入ってきたT型フォードの1台が京都にあり、それが壊れてしまいました。当時は、ディーラーも自動車工場もない時代ですから、創業者のところに修理の依頼が来ました。車を解体したところ、ボールベアリングの中にあるリテーナーが壊れていることが分かったのです。この経験から、創業者が自動車や住宅といったインフラストラクチャーを支えようと事業をスタートし、現在戸車を製造している特機事業部の起点にもなっています」(長﨑さん)
そして創業から100年を迎えようとするにあたって、新たなインフラストラクチャーを生み出そうと戦略デザイン事業開発室を設立。100個以上の事業アイデアを出していた中のひとつが、この「CLEAN BOX」だった。
「『生ゴミをゴミ出しの日まで冷凍庫で凍らせて保管している』という話を聞いたことがきっかけです。調べてみると、そういった人は多く、また(家庭で出た)オムツのゴミを駅のゴミ箱に捨てる迷惑行為が問題となっているなど、ニオイを発するゴミ、衛生的にリスクのあるゴミが普遍的なお困りごとであることも分かってきました」(長﨑さん)
ゴミを凍らせる際の「結露」や「騒音」を対策して開発
そうして開発されたのが「CLEAN BOX」だ。ゴミ箱の形状をした冷凍庫と言ってしまえばそれまでだが、通常の冷凍庫とは異なる工夫もなされている。
1つ目は「結露対策」。CLEAN BOXはリビングなどキッチン以外の場所に置かれることを想定しているので、結露によって生じた水分が絨毯や板間を汚損してしまわないよう対策が施された。具体的には、発生した結露を外に漏れないよう内側に隔離壁を設け、中の温かい空気の循環で乾燥させる構造を取っている。
2つ目は「静音性」。特に業務用冷凍庫ではコンプレッサーが発生させる音や振動があり、一般家庭にはそぐわない。CLEAN BOXでは、コンプレッサーの騒音や振動を極力抑えている。さらに2世代目となる新製品では、冷却用のファンをなくしたファンレス設計でより静音化を果たしている。
3つ目は、ゴミ箱としての「使い勝手」。ゴミを入れやすく出しやすいフタの形状、キャスター付きで簡単に引き出せ、ゴミ袋をひっかけて固定するホルダーなどを採用し、ゴミ箱としての使いやすさが追求されている。
なお、設定温度は-11℃(初代モデルは-10℃)を基準としており、-18℃を基準とする一般的な冷凍庫としての利用は推奨されていない。
実際に使ってみたら、凍らせるパワーは充分!
9月5日に一般販売が開始したCLEAN BOXの最新モデルを実際に1週間ほど自宅で使用してみた。最初に抱いた印象は、ステンレス調の外装がおしゃれなキッチンに似合いそうだということ。本体サイズは230×443×690mm(幅×奥行き×高さ)と、20Lの一般的なゴミ箱に比べると高さがあるので、ラックの下など一般的なゴミ箱を置けた場所に収まらない可能性はある。購入前に設置場所のスペースを確保しておきたい。
キッチンの生ゴミを捨てるために使うならキッチンに置くのベストだが、従来のゴミ箱と併用する場合は、ガレージや玄関先なども候補になるだろう。生ゴミが発生する場所からゴミ捨て場への動線に設置したい。
製品の特徴で説明したとおり、作動音はまったくしない。普通の冷蔵庫の方がよっぽど音がする。想定しづらいが、寝室に置いても睡眠の邪魔にはならないだろう。
凍らせるパワーは、生ゴミに対しては充分だ。-11℃と一般的な冷凍庫よりも控えめな温度設定なのは、鮮度の維持が目的ではなく、ニオイの発生を抑えられればいいからだ。試しに袋に入れた液体(お茶)を入れてみたが、5~6時間で完全に凍った。スイカの皮が凍ってゴミ袋を突き破ってしまったことがあったのも面白かった。
凍らせたゴミを大きなゴミ袋に入れる際も、あの生ゴミ特有のニオイはほとんどしない。まったく臭わないわけではないが、ニオイでむせかえることはない。とくに、腐敗の進行が早い夏場にはありがたさを感じる。ゴミ出しの心理的な抵抗感がなくなった。また、ゴミ箱が小バエの発生源となることもなくなる。
20Lの容量は夏休みシーズンの4人家族にはやや小さいが普段は足りそう
容量は20Lだが、キッチンのゴミ用に使う場合はどうだろう。地域によって異なるが、燃えるゴミの出せる日は週2回か3回。週2日だと、最長で4日間ゴミを出せないことになる。1日5Lに収まれば20Lの容量でも足りる計算だ。
我が家は4人家族、ちょうど夏休みシーズンのこともあり、生ゴミの出る量が多い時期だったので、2日間でいっぱいになってしまった。ゴミを入れる際に圧縮する、臭わないゴミは別にするなどの工夫が必要だろう。
もうひとつ気になったのは電気代だ。最初にCLEAN BOXを知ったとき、「わざわざ電気を使ってゴミを保管するなんて」とも思った。しかし、同社の試算によると、1年間にかかる電気代は3,362円ほどで、1日あたり9.2円。ゴミ捨ての際の不快感、衛生面での安心感を得られると考えれば、決して高くはないと感じた。
冷凍ゴミ箱が目指す、その先の未来
家庭用のゴミ箱として販売されたCLEAN BOXだが、中西金属工業としては、その先の展望があるという。
「実は物理法則的に、ものを効率よく冷やすのは、加熱に比べて難しいのです。しかし、建築施工現場では空調服が一般的になりましたし、冷凍食品の自動販売機が街中に増えるなど、何かを冷やしたい、しかも低エネルギーで冷やしたいというニーズは、これからもどんどん広がっていくと思います。我々の高効率で冷却する技術が、社会的なインフラストラクチャーを支えると見立てて、これからも事業を展開したいと考えております」(長﨑さん)。
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