料理家・冷水希三子(ひやみず・きみこ)さんが読者と私たち編集部のリクエストに応えて料理を作ってくださるという夢の連載。今回は年末年始のイベントごとや、おもてなしにぴったりの北京チキンをご紹介します。
―― 冷水先生、こんにちは。今年も残すところあとわずかになりました。
冷水 大変なことも多かったけど、楽しいことも同じくらいありました。
―― そうですね。この連載でもたくさんおいしいお料理を教えていただいて、本当にありがとうございました。
冷水 今回は今年最後の回ですね。もしかしたら新年にご覧になっている方もいらっしゃるかもしれませんね。
―― そうですね、その場合は、あけましておめでとうございます、ですね(笑)。
冷水 今日は何を作りましょうか?
―― 年末年始にはゲストを迎えてお食事をすることも多くなりますから、何かハレの日のお料理を教えていただきたいなと思うのですが……。
冷水 それはいいですね。どんなものが盛り上がるかしら?
―― わたしのリクエストで恐縮なのですが、人が集まるときは、「みんなで包む」料理が楽しいなと思うんです。手巻きずしとか、盛り上がりますよね?
冷水 みんなでワイワイ食べる料理はいいですね。会話も弾みます。
―― あとはやっぱり円卓!? 中華料理ってなんだかおめでたい雰囲気があって好きです。
冷水 あはは、確かにそうですね。
―― これはハードルが高すぎるかもしれませんが、北京ダックなんてどうですかね!?
冷水 まあ、高級中華(笑)! ダックは手に入れるのが大変だと思いますが、鶏肉を使えば自宅でも作れますよ。ちょっと気合が必要ですが。
―― 本当ですか!? 年に一度のことですから、気合入れて作ります!
冷水 わかりました。じゃあ北京ダックならぬ「北京チキン」を作りましょう。北京ダックはパリパリに焼けた皮の部分が主役ですから、そこも再現できるようにしますね。
―― すごく楽しみです!
冷水 パリパリの皮を作るポイントは鶏肉の下準備にあります。まずは鶏肉を10秒ほど熱湯にくぐらせて、その後、冷蔵庫で1時間ほど乾燥させます。さらに水と砂糖、ハチミツを混ぜて沸騰させた液を皮目にかけて、再び冷蔵庫で1〜2時間ほど乾燥させます。
―― へ〜、これであのパリパリ&ツヤツヤの皮ができるんですね。ちょっと手間ですが、あれがないと北京ダックの雰囲気を味わえないので、頑張ります!
冷水 皮を乾燥させたいので、冷蔵庫に入れるときはラップをかけないでくださいね。鶏肉を乾燥させている間に、チキンを包む皮を作っていきましょう。
―― うわあ、皮まで自家製とは本格的です!
冷水 もし北京ダック用の皮が手に入るようでしたら市販のものでも結構ですが、なかなか売ってないので(笑)。皮を作る工程もイベントの一部として、ぜひ楽しんでください。
―― それでこそ、おもてなし料理です!
冷水 今回は薄い皮を作りたいので中力粉を使います。もしない場合は強力粉と薄力粉を半々の割合で使っていただいても大丈夫です。ボウルに粉を入れて、そこに熱湯を一気に注ぎ、フォークなどで全体を混ぜていきます。
―― 全体が混ざったら、手でこねていくんですね。
冷水 全体がまとまればいいので、そこまで頑張ってこねる必要はないです。あとはラップをかけて1時間ほど寝かせてください。
―― 発酵が必要ないのはいいですね。
冷水 生地が落ち着いたら打ち粉をした台の上に乗せて、2等分します。それぞれを直径2〜3cmの棒状に伸ばして、それを10等分にします。
―― ギョーザの皮づくりに似ていますね。
冷水 でも、ここからがちょっとややこしいので、よく見ていてくださいね。10等分にした生地のうち二つを取って、それを上下に重ねます。このとき、それぞれ切断面を合わせるようにしてください。
―― 雪だるまみたいな感じですね。
冷水 そうそう、雪だるまの頭と胴体がくっつく部分がありますが、そこに薄く油を塗っておきます。これ、すごく大切です。
―― へえ、その心は!?
冷水 雪だるま形にした生地を上から手で押さえて、さらに麺棒で薄く伸ばします。1枚のギョーザの皮のように見えますが、間に油を塗っておくことで、焼いた後に2枚に分けることができるんです。
―― なるほど、接着剤の反対ですね。でも、どうして2枚に分ける必要があるんですか? こんな面倒なことをせず、1枚の生地として焼けばいいのでは……?
冷水 北京ダックを包む皮は、外側はパリッと香ばしい焼き色がついていますが、具をのせる内側には焼き目がなくて、しっとり、もっちりしているでしょう? この方法ならフライパンで生地を焼いても、内側はしっとりと仕上がるんです。
―― なるほど〜! ものすごい知恵ですね!
冷水 生地を両面焼いて、軽く焼き目がついたら取り出します。粗熱が取れたら、接合面に爪などを入れて、ゆっくりとはがしてみてください。
―― おおお、見た目は完全に1枚の薄い生地ですが、ちゃんとはがれます! なんだか気持ちいい〜(笑)。雪だるまの接合部分に油を塗っておく重要性、よくわかりました。
冷水 焦らずに、ゆっくりはがすのがポイントです。さあ、あとは鶏肉をオーブンで焼けばゴールはすぐそこです。焼けるまでの間に、一緒に巻く野菜とタレを作っておきましょうね。
―― タレも自家製!
冷水 これは甜麺醤(テンメンジャン)なので、市販のものもありますが、やっぱり手製がおいしいですよ。混ぜるだけなので、簡単です。
―― ここまできたら、作りますよ!
冷水 白髪(しらが)ネギは軽く水にさらしておくと辛みが取れて食べやすくなります。
―― きゅうりも頑張って細く切りました!
冷水 さあ、鶏肉が焼き上がりました。どうですか?
―― お店で見るようなテリとパリパリ感! こんなものが家で作れるなんて、驚きです〜(涙)。
冷水 皮の部分を薄くそぎ切りにして、今回はお肉の部分も食べましょうね。同じく程よいそぎ切りにして器に盛りましょう。さあ、召し上がれ。
―― …………。
冷水 どうしました?
―― おいしすぎて言葉になりません……。
冷水 まあ(笑)!
―― とにかく、まずはチキンを包む皮がすごいですね。おっしゃる通り、外側は香ばしくて、内側はしっとりしていて……。もっちりした食感がなんとも言えません。そしてこのパリパリのチキンの皮。ほぼほぼ北京ダックです!
冷水 よかったです。
―― 手作りの甜麺醤も市販のものとは比べものにならないくらい滋味深くて、これは1年を締めくくるのにぴったりの料理ですね。作る工程もエキサイティングなので、ゆっくり、楽しみながら準備したいです。
冷水 仲間と一緒に作るのも、きっと楽しいと思います。ぜひにぎやかで、おいしい年末年始をお迎えくださいね。
北京チキン
材料(4人分)
-
鶏もも肉骨つき
2本
-
水
150ml
-
砂糖
15g
-
ハチミツ
30g
-
中力粉
200g
-
熱湯
170ml
-
油
少々
B
-
八丁みそ
50g
-
砂糖
10g
-
みりん
小さじ1
-
濃い口しょうゆ
小さじ1
-
ねりごま
5g
-
きゅうり
1~2本
-
長ネギ
適量
- 鶏もも肉は余分な脂肪を取り除き、熱湯に入れて10秒くらいで引き上げる。水気を拭いて網などの上に置き、ラップをかけずに冷蔵庫で1時間ほど乾燥させる。
- Aの材料を小鍋に入れて火にかける。沸騰したら火を止める。それを1.の鶏肉の皮目に何回かに分けてかけ、再び冷蔵庫で1~2時間乾かす。
- ボウルに中力粉を入れ、熱湯を一気に加えてフォークなどで混ぜる。全体が混ざったら手でこねて、滑らかになったらラップをかけて常温で1時間ほど寝かす。
- 打ち粉をした台に3.の生地をのせ、2等分にしてからそれぞれ直径2~3㎝の棒状にのばす。1本を10等分にする。
- 4.で10等分した生地を、切断面が合わさるように二つずつ上下に重ねる。このとき、生地と生地が合わさる面に薄く油を塗っておく。上から軽く押さえ、麺棒を使って直径15㎝ほどにのばす。
- 5.の生地を、油を引いていないフライパンに入れ、中火で片面30秒ずつ、軽く焼き目がつくまで焼いて取り出す。5.で油を塗っておいた接合部分からゆっくりと生地をはがし、2枚に分ける。
- 2.の鶏肉を190度に予熱したオーブンで18分ほど、焼き目がきれいにつくまで焼く。
- Bの材料を混ぜてタレを作る。きゅうりは長さ5㎝の千切り、長ネギの白い部分は長さ5㎝の白髪ネギにする。
- 7.の鶏もも肉の皮目を薄くスライスして6.の皮にのせ、好みできゅうりと長ネギとタレをのせて巻いて食べる。
からの記事と詳細 ( 自家製皮で包む、おもてなしの北京ダック風チキン - 朝日新聞デジタル )
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