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Sunday, May 23, 2021

【石川】胃液で分解のナイロン 海のプラごみ誤飲 生き物救え - 中日新聞

消化酵素で分解されるナイロンを開発した金子達雄教授(右)とムハンマド・アシフ・アリー研究員=北陸先端科学技術大学院大で

消化酵素で分解されるナイロンを開発した金子達雄教授(右)とムハンマド・アシフ・アリー研究員=北陸先端科学技術大学院大で

北陸先端大・金子教授ら開発

 北陸先端科学技術大学院大(石川県能美市)の金子達雄教授(50)=高分子化学=とムハンマド・アシフ・アリー研究員(35)は、胃液に含まれる消化酵素ペプシンで分解されるナイロンを開発した。プラスチック素材で利用が進めば、海洋ごみを誤飲した魚や亀、鳥などの生物が救える可能性が広がる。(平井剛)

 プラスチックは軽くて自由に成形できるが、自然に分解されないため、海に漂着したごみは生態系に深刻な影響を及ぼす。金子教授らはプラごみ問題の解消をテーマにして、水や光、微生物の働きで分解されるナイロンやポリエステルなどの素材を研究している。

 今回は、ナイロンの一般原料である化学物質ヘキサメチレンジアミンに、天然分子のイタコン酸とロイシン(アミノ酸)を化学合成したジカルボン酸を反応させて、新たなナイロンを作った。ヘキサメチレンジアミンとイタコン酸でナイロンを作れることは分かっていたが、アミノ酸を加えて作る方法を突き止めたことが開発につながった。生物が誤飲しても胃液がアミノ酸を分解し、ナイロンが体内から消えて無くなる。

 従来のポリエステル製などの海洋分解性プラスチックと比べて、耐熱性や強度でも優れている。また、イタコン酸は大気中の二酸化炭素(CO2)を取り込む性質があるため、ナイロンが分解されてCO2が大気中に出ても、理論上はCO2が増えない「カーボンニュートラル」が実現できる。

 研究成果が四月三十日にドイツ科学誌のオンライン版で公開されたところ、フランスと米国の化学メーカーから実用化に向けた申し出があった。課題は量産化とコストの引き下げだが、金子教授は「容易に解決できる」とみている。

 海洋ごみの多くを占める釣り糸や漁網などに利用されることに期待を寄せる。金子教授は「便利なプラスチックを社会から無くすのではなく、プラスチックのごみをゼロにする発想で、今後も課題解決に取り組みたい」と話している。

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