まだ夜も明けきらない平日の午前5時。松山市内のごみ集積所に、人知れず目を光らせる人がいる。ごみの持ち去り行為をパトロールする市職員だ。
始まりは、県警が発表した1枚の報道資料だった。5月2日、同市内のごみ集積所から古紙1束(約3キロ・グラム)を持ち去った疑いで男(45)が逮捕された。
古新聞はペットのふんの処理用に悪意なく持ち去る人もいるが、換金目的でリサイクル業者に持ち込むため、車で大量に運び去る人がいるという。「資源ごみを無断で持ち去る行為が相次いでいるのではないか」。そんな疑問がわき、同市清掃課に“真相”を確かめに行った。
しかし、予想はあっさり裏切られた。同課の松本健主任は「資源ごみの持ち去り行為は極端に減っています」と説明する。2009年改正の廃棄物に関する市条例が功を奏し、同年度に50件あった違反者への警告などは22年度に3件まで減少した。
条例のほかにも減少の理由があるかもしれないと思い、次はパトロール職員に同行取材した。
5月25日早朝、まだ人けの少ない同市清水地区。1台の軽乗用車がゆっくりゆっくりと町内を回る。元警察官で構成されたパトロール職員は集積所をくまなく調べていった。
「ここは古新聞が多く、過去に持ち去り行為が起きた場所」「あそこは段ボールの陰に新聞の束が置かれることがある」……。狙われやすい古紙類はとりわけ注意深く確認する。持ち去り常習者の車を見つけた際は、先回りして木陰に張り込むこともあるという。1時間で約20か所を回り、職員がごみの量や特徴を場所ごとに細かく把握していることが分かった。
一般的に、ごみは所有権のない「無主物」とされる。松山市は資源ごみを収集後に売却し、市の財政に繰り入れる。近年、古新聞やチラシだけで売却益は年間約1100万円にもなる。かつては3000万円に達する年もあったという。
ところが00年代、古紙価格の上昇とともに持ち去り行為が増え、売却益は減少。住民から「ごみを持ち去る人がいて不安」などの声も上がり、条例改正につながった。今は委託業者以外がごみを収集、運搬することは禁じられている。
たかが「ごみ」ではなく、されど「ごみ」なのだ。パトロール職員がなぜ真剣に巡回するのか
からの記事と詳細 ( 愛媛:ごみ持ち去りゼロへ巡回:地域ニュース : 読売新聞 - 読売新聞オンライン )
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