勉強や仕事に欠かせない文房具で、プラスチックを減らす商品の開発が進んでいる。透明なクリアファイルを紙製に置き換えたり、海に漂うプラスチックごみからペンを作ったり。日常生活で目にする機会はまだ少ないが、持続可能な開発目標(SDGs)の取り組みに力を入れる企業などが導入する例が少しずつ増えてきた。 (海老名徳馬)
「当行のクリアファイルです」。清水銀行(静岡市)の行員が差し出したのは、全て紙でできたファイルだ。中に入っている情報誌「しみずミニレポート」もくっきり見える。提案書などを顧客に渡す際に使っていたプラスチック製ファイルの代わりとして、昨年三月に導入した。担当者は「SDGsに貢献でき、顧客との話題づくりにも役立っている」と話す。
作ったのは紙加工会社の東伸紙工(静岡県富士市)。コロナ禍で企業などのペーパーレス化やデジタル化の動きが加速し、主力だった伝票の受注が減少。新製品を模索する中で紙のファイルに着目した。
まず作ったのは透けないタイプで、営業先では「透明なファイルを」との要望が多かった。中身が見える紙として目を付けたのが、図面を転写する際などに使うトレーシングペーパーだった。自社の設備に合う材料を探し、昨年一月、表側が透けるファイルを法人向けに発売。プラスチック製ファイルに比べれば高価だが、全国の企業や自治体、学校など百カ所ほどで使用されている。
紙なので、鉛筆やペンで上から文字や絵をかける。塗り絵の柄を印刷したり、中に絵を入れたりして自由に塗ることもでき、イベントなどで子どもに描いてもらう例もあるという。
使用後は中の書類と一緒にリサイクルに出せる。社長の久保田基之さん(59)は「企業にとっては、SDGsに取り組んでいると外部にアピールする材料にしやすい。社外などの人に渡すファイルは紙製、社内で何度も使う場合はプラスチック製と使い分けるのもいいのでは」と期待する。
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「脱プラ」の機運が高まるきっかけの一つとなった海洋プラスチックごみをリサイクルした文房具が、三菱鉛筆(東京)のボールペン「ジェットストリーム 海洋プラスチック」(二百二十円)だ。ペン軸の原料に、長崎県対馬市で回収された海洋ごみと、店頭などで集められた使い捨てコンタクトレンズの使用済みケースを再利用。昨年七月から名入れ専用商品として販売している。
筆記用具に再生プラスチックが使われることは多く、同社では製品全体のプラスチックのうち、20%が再生材という。ただ、原料にはさまざまな素材が混ざっており、利用者にはどのようにリサイクルされた品か分かりにくい。
海洋プラスチックとコンタクトケースを使ったペン軸は、他の材料をほとんど使わず、海をイメージした水色のシンプルなデザイン。開発に携わった同社商品開発部商品第二グループの藤川恵汰さんは「どんな品がどうリサイクルされているか。利用者にその物語が分かりやすく、環境への良さをより納得してもらえるのでは」と話す。企業や学校などから幅広い注文があり、売れ行きを見て一般販売も検討するという。
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