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Thursday, January 12, 2023

資源ごみ回収拠点での「ついでの交流」に健康増進効果、奈良県生駒市 - 日経BP

自治会が設置した資源ごみの回収拠点を通じて地域コミュニティの再生を進めることで、住民が健康になる効果を調査で確認――。奈良県生駒市は2019年度にモデル事業として、地域の自治会館周辺などに、資源ごみ収集拠点とコミュニティカフェを併設し、市民にごみ出しついでの交流を促す施策を実施。2022年6月に発表した千葉大学予防医学センターとアミタホールディングスの共同研究『資源化分別行動などを含む「地域交流拠点への参加」による介護予防効果の測定』によって、健康への意識や幸福感が増加するとともに、要介護リスクが低下することが明らかになった。同市は2020年度から始まった「100の複合型コミュニティづくり」と総称する施策の1つとして、資源ごみ回収による地域再生事業を推進している。

 地域づくりにおいて住民の健康状態悪化や要介護リスクの増加は、大きな課題の1つである。多くの自治体がその解決に取り組んでいるが、高齢化が急速に進む中、打ち手は1つでも増やしておきたいところだろう。奈良県生駒市は、資源ごみ回収スペース「こみすて」を設置。ここでの「ついでの交流」という日常行為を通じて、市民の健康への意識や幸福感の増加、要介護リスクの低下が促されることを実際の調査で確認したことで注目を集めている。

生駒市の萩の台住宅地自治会の「こみすて」入り口付近(実証期間中のもの、出所:アミタホールディングス)

生駒市の萩の台住宅地自治会の「こみすて」入り口付近(実証期間中のもの、出所:アミタホールディングス)

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 生駒市は1970年代の高度経済成長期に大阪のベッドタウンとして発展し、2010年には人口が12万人に達した。しかし、子育てを終えた市民が増えたこともあり、2020年には人口が11万人台に減り、高齢化も進んでいる。2022年12月時点の高齢化率(65歳以上の人口比率)は29.13%と全国の平均的な値だが、今後30年で老齢人口の割合が10ポイント以上増加すると見込まれており、高齢化の早さは全国でも上位に入るという。

 人口減少や高齢化は同市の地域コミュニティにも影を落としている。市内には127の自治会があり、ごみ集積場所の管理、公園や周辺道路の環境美化、児童の見守りや交通安全活動、防災訓練、お祭りや行事を通じて、地域づくりの重要な柱となってきた。しかし、近年では8割だった自治会加入率が7割台へ低下、構成員についても高齢化が進んだことを踏まえ、加入者の増加や活動の活性化といった地域コミュニティ再生への施策が求められるようになっていた。

 実証実験「日常の『ごみ出し』を活用した地域コミュニティ向上モデル事業」はそうした状況の下、生駒市が2019年12月から2020年2月にかけて、萩の台住宅地自治会(約700世帯)と光陽台自治会(約200世帯)で実施した(萩の台住宅地では、実証実験を終えたあとも活動は継続中)。資源リサイクルに強みを持つアミタグループのアミタが事業を受託し、同社とIT企業のNECソリューションイノベータが、市民による資源ごみの分別回収とともに、買物支援、健康づくり、介護予防など様々な地域活動を実施する拠点として「資源循環・コミュニティステーション」を構築してその運営を支援するもので、拠点はコミュニティステーションを縮めた「こみすて」の愛称で呼ばれる。

萩の台住宅地自治会の「こみすて」のレイアウト図(実証期間中のもの、出所:アミタホールディングス)

萩の台住宅地自治会の「こみすて」のレイアウト図(実証期間中のもの、出所:アミタホールディングス)

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 萩の台住宅地自治会については、こみすてが自治会館周辺に常設され、休館となる日曜日以外は活動して、缶・瓶・プラスチック製容器・生ごみ・紙おむつ・ペットボトル・不燃ごみなど10品目の回収を行った。光陽台自治会については車両にこみすての備品を搭載し、集会所で週2日運営。生ごみ・紙おむつ・ペットボトル・不燃ごみの4品目を回収対象品とした。

 こみすてのもともとの狙いは、住民に資源ごみを細かく分別して集積場所へ持ち込んでもらうとともに、併設したカフェやウッドデッキなどで、集まってきた住民同士のコミュニケーションを促すことだ。つまり、メインの目的は資源ごみ回収であり、住民の「ついでの交流」促進による地域再生である。それに加えて、コミュニティの結束を強めることが結果として、健康意識の高まり、介護リスクの低下につながることが調査で示された。このことについて生駒市の担当者は次のように評価する。

 「単純に人と人との関わりが週に1回あるかないかで、健康リスクに影響するという、(全国約200市町村の延べ75万人の高齢者データを活用した産官学連携研究に取り組んでいる)日本老年学的評価研究機構(JAGES)の研究結果もある。こうしたことが市内の実証実験で定量的に算出でき、市民にも利点を伝えやすくなった」(生駒市福祉健康部地域包括ケア推進課の澤辺誠氏)。

オンライン取材に対応する生駒市福祉健康部地域包括ケア推進課の澤辺誠氏(左)と同地域活力創生部地域コミュニティ推進課の白川徹氏(右)

オンライン取材に対応する生駒市福祉健康部地域包括ケア推進課の澤辺誠氏(左)と同地域活力創生部地域コミュニティ推進課の白川徹氏(右)

 NECソリューションイノベータの役割は、こみすてへの参加を促す仕組みをICT技術で構築することである。住民はスマートフォンやプラスチックカードで利用者登録を行い、実証実験に参加してもらう。資源ごみを持ってきた回数や、それに伴うCO2の削減状況が分かるようにすることで参加意欲を高める。また、登録者のうち、こみすてへ来る頻度が少ない市民には、フォロー情報を発信する仕掛けを用意した。

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