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Tuesday, April 19, 2022

脱原油 ごみ・植物・廃油から化学品、環境負荷を削減 最大手ら技術開発急ぐ - 産経ニュース

住友化学が千葉工場に新設したエチレン製造設備。積水化学工業のバイオエタノールを原料に使う=千葉県市原市

化学大手が、植物をはじめとするバイオマス原料から樹脂などの化学品を作る技術の開発を急いでいる。原油由来のナフサ(粗製ガソリン)から作る従来品に比べ、焼却処分しても原料製造からのトータルで温暖化ガス排出を抑制できる。コスト低減などの課題はあるが、顧客が環境負荷の少ない製品を求め始めていることもあり、事業化の動きが急速に熱を帯びている。

三菱ケミカルホールディングス傘下で化学最大手の三菱ケミカルは、植物由来の「バイオエタノール」から樹脂原料などを製造する技術を開発、令和7年度に製造・販売を始める。

とうもろこしやサトウキビから作ったバイオエタノールを豊田通商から調達。化学品の基礎原料であるエチレンや樹脂原料の「プロピレン」を製造する。

包装材や容器、衛生用品などのうち、回収やリサイクルが困難な製品への採用を目指す。エチレン製造設備は、国内の既存拠点内に新設する方向で検討する。

積水化学工業はバイオエタノールをごみから作ろうとしている。

このほど岩手県久慈市に拠点を新設。同市から譲り受けた1日20トンのごみを微生物で分解し、バイオエタノールを得る。それを住友化学が引き取り、千葉工場(千葉県市原市)内に設けた設備でエチレンや汎用(はんよう)樹脂の「ポリオレフィン」にする。試験製造を始めたばかりだが、積水化学は7年度には正式に事業化する考えだ。

一方、三井化学は廃棄植物油などから作った「バイオマスナフサ」を、フィンランドのエネルギー大手ネステと豊田通商から調達。2月に基礎化学品の「フェノール」、3月には自動車部品などに使う樹脂である「ポリプロピレン」の製造を大阪工場(大阪府高石市)で始めた。バイオマスナフサは石油由来のナフサと混ぜられるため、既存の設備を活用できる利点がある。最初の1年で、ナフサ換算で1万トン分の販売を目指しているが、橋本修社長は「当初の想定以上に反響が大きい」と話す。

三井化学の大阪工場に荷揚げされるバイオマスナフサ=大阪府高石市

化学大手では、ほかにも東レがスポーツ衣料などの素材となる繊維「ナイロン510」を植物の「ヒマ」やとうもろこしから作り、来年の秋冬シーズン向けに生地販売を始める。旭化成もバイオマス原料から樹脂や繊維の原料となる「アクリロニトリル」や「ナイロン66」を作る技術の開発を進めている。

化学業界は素材供給を通じて多くの産業を支え、軽量化などで環境負荷低減にも貢献してきた。ただ、近年は「脱・化石資源」の進展や海洋プラスチックごみ問題などで風当たりが強まりつつある。企業に樹脂の使用削減を求める「プラスチック資源循環促進法」が4月1日から施行されたことも逆風だ。

一方で、代替素材の開発で収益拡大が期待できるとの見方もある。ロシアのウクライナ侵攻もあって原油価格が高騰し、バイオマス化学品と従来品との価格差が縮小傾向にあることも追い風になっており、開発の動きは今後も加速しそうだ。(井田通人)

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