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Saturday, April 2, 2022

高齢者の「ごみ屋敷症候群」~生活が荒廃する三つの要因(東京都健康長寿医療センター研究所 井藤佳恵部長)~ - 時事メディカル

 家の中や庭に、物が積み上げられ、片付けられない「ごみ屋敷」。原因は個人的事情もありさまざまだが、高齢者の場合は認知症などが背景に存在する場合もある。どのような人に起こるのか。東京都健康長寿医療センター研究所(東京都板橋区)介護・エンドオブライフ研究部門の井藤佳恵部長に聞いた。

欧米では50年以上前から知られる「ごみ屋敷症候群」。独り暮らしで認知症が進むと誰でもなり得る

 ▽孤立した高齢者

 物が散乱したままで生活が荒廃する状態は「ごみ屋敷症候群」とも呼ばれ、国内ではテレビの情報番組でたびたび取り上げられる。欧米では「ディオゲネス症候群」「老年期隠遁(いんとん)症候群」などと呼ばれ、50年以上前から知られている。

 古代ギリシャの哲学者ディオゲネスにちなんで名付けられた。社会から孤立し、身だしなみや衛生面に無頓着となった高齢者が、不衛生な住環境で暮らす状態を指す。付随してさまざまな物を自宅内外にため込むようになる。

 「ごみ屋敷症候群」に関する研究は、これまで西欧の都市部を中心に幾つか行われてきたが、どういう人が、なぜ生活を荒廃させてしまうのかは明らかではない。国内では系統的研究が行われておらず、井藤部長らは、自治体の過去約10年間のデータを分析した。

 ▽誰にでも可能性が

 東京都の都市部の高齢者支援困難事例(支援者で、ケアや支援に苦慮した高齢者)の270人を住環境の衛生状態と散らかり具合により、「ごみ屋敷症候群」に該当する61人と、該当しない209人を比較した。

 その結果、「ごみ屋敷症候群」のグループは平常の暮らしができているグループに比べ、〔1〕独り暮らし〔2〕進行した認知症〔3〕基本的な日常生活動作の低下―が高率で見られ、この三つの因子が関連することが明らかになった。また、早期に死亡するリスクも高いことが分かった。

 「独居高齢者の認知症が進行し、身体機能が衰えた時に、適切な支援がなければ、誰でも『ごみ屋敷症候群』になる可能性があることが示されました」と井藤部長。

 「対策は簡単ではありませんが、単に片付けて住環境を整えるだけでは解決できないことは確かです。まずは、身体面も含め、さまざまな問題を抱えていることを理解しようとする気持ちが重要です」と話す。(メディカルトリビューン=時事)(記事の内容、医師の所属、肩書などは取材当時のものです)

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