ごみ収集をデジタル活用することで効率化させる取り組みが神奈川県座間市で進んでいます。その効果は作業の効率化だけでなく、ごみの削減や防災対策まで及んでいました。
(横浜放送局/記者 岡肇)
デジタルの波はごみ収集の現場にも
住宅街をくまなくまわって、ごみを集める職員たち。座間市では、ごみ収集の時にデジタル化を取り入れる実証実験を行っています。
鍵になっているのが、タブレット型端末です。こちらの画像、青い丸が現在地を示しています。緑色のマークは、すでに収集した集積所。黄色のマークは、まだ収集が済んでいない集積所を示しています。
収集車の位置や、回収が済んだ集積所はどこかなど、最新の情報が共有されているのです。
ごみ収集車の情報は、市のクリーンセンターのモニターでリアルタイムで確認することができます。
データをもとに作業時間や燃料を大幅に効率化
座間市ではこのデータを元に効率化を進めようとしています。
これまでは収集車は1台ずつ、それぞれ決められたルートを担当していました。しかし、その日に出るごみの量や道路状況によって、作業時間に大きなばらつきが出ていました。
一方、デジタル化ですべての車の情報をリアルタイムで把握できるようになりました。余裕がある車を作業が進んでいないルートに回せるようになり、全体の効率化が進みました。
その結果、ほとんどの車がごみをいっぱいに積んでから、焼却施設に向かうようになりました。10キロ以上離れた焼却施設との往復の回数が減り、走行距離はおよそ2割、燃料代は3割近く削減できました。
座間市資源対策課 依田玄基 課長
「ごみ収集は長い間、ドライバーが朝出て夕方帰ってくるまで何が行われているか、現場に任されていました。今は、それぞれの仕事をデータとしてきちんと捉えて、可視化することで、効率化できることがたくさんあることに気づきました」
ごみの削減効果も
デジタルによる効率化は、ごみそのものの削減にもつながっています。これまで燃えるごみとして集めていた木の枝や草は、効率化で生まれた人員で、資源として別に集めることができるようになりました。
集めた枝や草は市内のリサイクル工場に搬入。バイオマス発電の燃料となる木くずチップに加工することで、年間およそ1300トンのごみの削減を見込んでいます。
ごみ出しもデジタル化で便利に
デジタル化で、ごみの出し方が便利になる可能性も出てきています。
システムを市民に直接活用できるようにしようと、収集車が今どこを走っているかをスマートフォンで誰でも見られるような仕組みの開発も進めています。
協力するのは、市内を走る鉄道会社。列車の運行状況を確認できるアプリを参考にして、自宅近くの集積所にまだごみを出せるか分かるようにしようというのです。
せっかくごみを持ってきたのに、「ああ、収集車が行っちゃったんだ」と、また家に戻さないといけないという手間も省けます
収集車が来てしまった後だったら悲しいですからね。だから、スマートフォンをぱっと見れば、まだ大丈夫かどうかがわかるように、確実にやっていきたいですね。
防災分野でも活用
デジタル化は、防災の分野でも役立ち始めています。10月1日に台風16号が接近した際には、収集員が街を回りながら、タブレット型端末で川の様子などを撮影しました。
データは防災担当に送信され、いち早く川の水位や道路の冠水が起こりやすい場所の状況を把握できました。
座間市危機管理課 神宮寺康弘 課長
「災害が発生したときは、情報をいかに集めるかということが焦点になります。リアルタイムでこのような情報が市内のあちらこちらから集まってくるというのは、危機管理や災害対策に非常に有効だと思います」
効率化の先に見据えるのは
市では、ごみ収集の効率化をさらに進めて、ゆくゆくは環境問題などの課題解決にもつなげていきたいとしています。ゴミ収集の現場が率先して前向きな姿勢を示すことが、何よりも市民へのメッセージになると考えています。
座間市資源対策課 依田玄基 課長
「循環型社会の形成は1人ひとりが行動していかなければ実現できません。そうした行動をみなさんにお願いするためにも、まずは私たちが一歩を踏み出して、ふだんの仕事を改善し、効率的にしていく姿をみせることで、みなさんにお伝えできればと思っています。それが一人ひとりの行動を変える原動力になると信じています」
編集後記
頭ではわかっていても、環境にやさしい行動を継続的に行うのは簡単ではないのが現実です。その旗振り役のごみ収集の現場が、デジタル化をてこに仕事の効率化を、先頭を切って行うところに、この取り組みの意味があるのだと思います。お願いする現場がまずは結果を示す。この当たり前のことを当たり前に行うことが、市民の意識を高める最初の一歩になるんだと思います。
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