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Saturday, November 4, 2023

<著者は語る>もうかるリサイクルへ 『循環経済入門 -廃棄物から考える新しい経済』 立命館大教授・笹尾俊明さん ... - 東京新聞

 ごみ処理に関する経済学的分析を「奥深く、気が付けば30年近く」続けてきた。本書では、持続可能な生産や廃棄物処理を経済活動に組み込むよう仕組みごと再設計する「循環経済」の考え方が欧州で広がっていることを紹介。世界で厳しさを増す資源確保と環境問題を同時に解決する成長戦略として、日本のごみ問題を考える。

 循環経済ではごみを減らすだけでなく、製造や流通の段階から資源再生を前提に原料や方法を選ぶなど全体を最適化する。廃棄物処理はコストがネックで、日本では「個人の努力による分別で成り立っている」と指摘。また「日本はうまく焼却処分する方法ばかり考えてきた」ため再利用の態勢が貧弱で、再生率10%を超えたあたりで損が上回ってしまうのが現状という。

 ただ、資源価格の上昇が続けば「リサイクルでも採算が取れる可能性が出てくる」。廃棄物を効率よく集めて天然資源と肩を並べる原料に変える仕組みを作り、廃棄物処理をもうかる産業として育てる必要があると説く。今は家庭ごみの約4割を占めるが、ほぼ手付かずの生ごみが新たな“宝の山”になるのでは、と注目している。

 他にも、行動を変えるための動機付けなど経済学的知見の活用策を多く紹介。3年前のレジ袋有料義務化は「袋を持参する意識を定着させ、高い削減率を達成した」成功例として挙げる。

 もともと環境問題に関心が深くてこの研究を始めた。「自然界では物質は当たり前に循環するのに、人間の経済活動はそうじゃない」。経済と環境は、一方を優先すれば他方が損なわれるトレードオフの関係だが「経済学自体がトレードオフを考える学問」と前向きに捉え、ごみを出さないという究極の理想を追う。 (松崎晃子)

岩波新書・1012円

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