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Saturday, August 19, 2023

どさくさに紛れ粗大ごみも「祭り」後の収集現場 - article.auone.jp

ごみが一度に、しかも大量に排出される祭り会場。このようなごみは誰が収集・処理しているのでしょうか(筆者撮影)

新型コロナウイルスが蔓延した2020年以来、人が密集する「祭り」の開催は全国的に見合わされてきました。2023年5月から新型コロナの「5類感染症」への移行により「祭り」が再開され、「4年ぶりの開催」という言葉をよく耳にするようになりました。

祭りには多くの見物客が訪れ、そこではごみが一度にしかも大量に排出されます。このようなごみは誰が収集・処理しているのでしょうか。本稿では祭りの後のごみの行方をお伝えするとともに、今後私たちが祭りに行く際にはどんな点に注意してごみを排出したらいいのか、現場の声も併せてお伝えします。

祭り会場で発生するごみの収集工程

祭りで生じるごみは、家庭から排出されるごみではないため「事業ごみ」として扱われ、祭りの主催者が処理・処分しなければならない。しかし、主催者自身が行うのは実際問題難しいため、民間の事業系廃棄物収集業者に委託する。地方自治体が祭りに協賛する場合には、自治体も協力して収集・処分することもある。

委託される事業系廃棄物収集業者に勤務する人によると、担当した都内で開催された祭りでは、次のような手順で収集・処分を行っていたという。

① ごみ対策スタッフとなり会場の複数個所にごみ箱を設置していく。その際には分別して排出してもらうよう複数のごみ箱を設置する。

② 祭りが始まると設置したごみ箱を見回り、ごみ箱が一杯になれば箱を取り替え、ごみをあらかじめ決めておいた場所に持っていき仮置きする。

③ 祭りの翌日早朝に仮置きしたごみを収集車で回収していく。

このような流れのうち、どの部分を誰が担当するかはさまざまな事情により相違する。①②③のすべてを地元地方自治体が担う場合もあれば、事業系廃棄物の収集業者に委託する場合もある。

また、①と②を地元の自治会・町内会に依頼し、③のみ事業系廃棄物の収集業者に委託する場合もある。これらは祭りの規模、主催者・協賛の状況、協力事業会社の有無などといった要因により変わってくる。

なお、排出される可燃ごみは、清掃工場に搬入して焼却処理されていく。一方、ペットボトル・瓶・缶といった資源については、収集業者か中間処理業者で仕分けられた後、リサイクル業者に回されていく。

祭りの後のごみ収集の実際

ここからは具体的な例を挙げてみてみる。

1、行政が協力する神楽坂まつりのごみ収集

「神楽坂通り商店会」が主催する神楽坂まつりには阿波踊りとほおずき市があり、翌日には一度に大量のごみが排出される。それらは、来年度からは事業系ごみとして処理することになるが、今年度まではコミュニティ活動で生じた「ボランティアごみ」として新宿区が収集している。通常の収集業務に影響が出るため、別途清掃車を用意して収集作業を行う。

神楽坂まつり阿波踊り大会(筆者撮影)

ごみには、可燃ごみ、不燃ごみ、資源が同時に出されることが多いため、いったん清掃センターに持ち帰り、清掃職員が分別している。筆者も以前仕分け作業を行わせていただいた経験があるが、一緒くたになったごみを分ける作業は臭いも生じるため、かなり過酷な作業環境となる。

神楽坂まつりほおずき市で排出されたごみ(筆者撮影)

私たちの見えないところで人々が黙々と働き、祭りの後片付けが行われている。

2、仙台七夕まつりの竹収集と環境局によるリサイクル

仙台七夕まつりで生じるごみからは「竹飾り」も排出される。可燃ごみは清掃工場で焼却するが、竹については仙台市環境局がリサイクルを行っている。

仙台七夕祭りで排出される竹(写真:仙台市環境局提供)

祭りの翌日早朝、主催の仙台七夕まつり協賛会(仙台商工会議所)からの依頼を受けた環境局がごみの収集作業を行う。主会場が中心部の商店街のアーケード内であるため、人通りが少ないうちに収集を実施する必要があることから、早朝6時からの収集作業となっている。

その他、各地元商店会などからも排出されるため、合計20カ所ほどの商店街を回って、清掃車3台とダンプ3台、約25名体制で収集を行っている。

収集した竹については、以前は紙へとリサイクルする「竹紙プロジェクト」を行っていたが、紙の市況が低迷し継続が難しくなって終了した。現在では剪定枝の受け入れを行っているリサイクル施設に搬入してチップ化し、ボイラー燃料へとリサイクルしている。2022年は3740㎏の竹をリサイクルした。

竹を収集する様子(写真:仙台市環境局提供)

祭りから生じるごみの一部をリサイクルに回してごみ減量へとつなげている。そのためにも多くの方々が裏で汗を流している。

3、町会の協力で行われる隅田川の花火大会のごみ収集

東京の夏の風物詩の1つと言われる隅田川の花火大会には過去最多の103万人を超える見物客が訪れた。見物客へは「ごみは持ち帰るように」とアナウンスされていたが、不法投棄への対策として、墨田区では、白鬚橋から両国橋あたりを中心に清掃ルートを設定し、集積所を用意するようにしていた。

そこでは、近隣町会の協力を得て、ごみ箱用の段ボールを事前に配付し、ルート上に設置してもらうとともに、町会の方々には自主警備という形でさまざまな場所に立ちながら、大会終了後、指定の場所にごみが集まるように対策を施していた。

当日深夜、その段ボールを区から委託を受けた民間の事業ごみ収集業者が収集して回わり、収集後、事業者の方で分別を行い処分していた。

大規模な花火大会の陰では、地元の自治会・町内会の方々の協力により祭りのごみの収集が行われている。その協力の背後には地元の皆さんの相当の理解が存在していることが容易に推察される。

祭りに乗じた便乗ごみ問題

大きな祭りであれ地元の自治会・町内会の小さな祭りであれ、一度に大量のごみが排出されてしまうため、仮置き場にはかなりの量のごみが積み上がり「ごみ山」ができる。それに便乗し、そのごみ山に祭りとは関係のないごみを排出する人々がいる。また、通常は排出してはならないごみを不法投棄する人々もいる。

阿佐谷七夕まつり(筆者撮影)

先日訪問した東京都杉並区阿佐谷の七夕まつりでは、店先でさまざまなフードやドリンクが販売されていた。そこから生じたごみは、事業系廃棄物の収集業者への委託が難しい小規模の店舗では、区が発行する「事業系有料ごみ処理券」を貼付して中杉通りや青梅街道等に11カ所設置された臨時集積所に排出するようになっていた。

祭りの後のごみ出し状況を確認したところ、有料ごみ処理券を貼付せずに排出しているごみも複数見受けられた。祭り中は収集車が商店街の中に入れないため、臨時集積所は商店街の中に居住する住民のごみの排出場所ともなっている。

そのため処理券が貼っていないごみは居住者が排出した可能性があるが、明らかに祭りの飲食店から出されたごみと判定できるものに処理券が貼付されていなかった。

中には「有料ごみ処理券」が貼付されていないごみも(筆者撮影)

また、個人の粗大ごみを便乗して排出するケースもある。知人の清掃職員の方によると、ひどい時にはテレビや冷蔵庫が排出されていたこともあったという。

杉並清掃事務所によると、今年度はビデオデッキが便乗ごみとして排出されていたとのことである。非日常の祭りのどさくさに紛れて無茶苦茶なことをする人々がいるのは非常に残念である。

祭りにおけるごみの分別排出の必要性

祭りの後のごみ収集・処理においてポイントとなるのは、ごみがしっかりと分別されて排出されるかどうかである。

民間会社であろうが地方自治体であろうが、通常のごみ収集に見合うだけの人員体制で業務を行っているため、祭りごみの業務が追加で加わってくると、それを担うための十分な人員体制が構築できず、きめ細かな対応をするのは難しい。

大規模な祭りで一度に大量のごみが可燃ごみ・不燃ごみ・資源と一緒くたに混ざって排出されると、収集作業で作業員が不分別のごみを目にする限りは取り除けても、現実的には十分な対応ができないまま運搬・処理を進めていかざるを得ない。また、仮にするにしても場所的な制約もあり難しい。

よって、可燃ごみの中にペットボトルや瓶・缶が入れられていても、すべてを取り除くことは不可能であり、可燃・不燃・資源が混ざったまま清掃工場に搬入されているのが現実だ。

祭りのごみ収集についての実地調査や多くの関係者の方々からお話をお伺いしていくうちに、筆者は「祭り見物に行く人のごみ排出への協力」が必要であると痛感した。

まず、祭り見物に行く際には、極力ごみを出さない、会場に飲食物を持ち込む際には、持ち帰れるよう準備しておくようにする。一人ひとりのごみはわずかでも、多くの人々が排出するとかなりの量となり、それを誰かが収集してまわることになる。祭り会場で飲食できごみをその場で排出できるならば、分別ルールに従ってしっかりと排出することが必要だ。

ここ数年はコロナウイルスの蔓延防止で祭りが中止となっていたため、久々の祭りの開催は私たちをいっそう解放的にして平常心を失わせる。

しかし華やかな祭りの裏では、実に多くの人々がごみの収集・運搬、処理・処分に裏方として携わって汗を流してくれている。中にはボランティアで活動してくれている人もいる。これらの人々の存在に思考を巡らせながら華やかな祭りを見物して楽しい時間を過ごすのが必要ではないだろうか。

近年サッカー、野球、ラグビーなどの世界大会において、日本人観客がスタンドに落ちているごみ拾いをしていることが報道されていた。このようなムーブメントが祭りや花火大会でも起こればいいと願っている。

(藤井 誠一郎 : 立教大学コミュニティ福祉学部准教授)

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