プラスチックごみであふれた川や海岸、有害物質が蓄積した魚介類――。子どもたちに残すべき未来の環境ではない。交渉が本格化するプラごみ条約で大幅削減を実現することは、大量に消費してきた世代の責任だ。
プラごみ問題は深刻化している。経済協力開発機構(OECD)によると、排出量は2019年には3億5300万トンと20年前の約2倍になった。50年には海中のプラスチックの総重量が魚のそれを上回るとの予測もある。日本は、1人当たりの使い捨てプラごみ排出量が米国に次いで多く、責任ある立場だ。
19年に大阪で開かれたG20サミットでは「50年までに新たな海洋汚染をなくす」との目標がまとまった。今年のG7サミットでは、「追加的な汚染ゼロ」を40年に前倒しした。
昨年の国連環境総会は、法的拘束力がある条約を24年中に作ることに合意。それに向けた政府間交渉の第2回会合が先週あり、約170カ国や国際機関、NGOなどが参加。条文案を秋までに作ることが決まった。
欧州などは世界共通の削減目標などの基準を盛り込み、プラスチックの生産量も規制することを主張している。日本は、生産、消費の段階に求められる取り組みを各国の事情に合わせて実施すべきだという立場で、中国や米国も同様だ。今後、世界共通の目標を掲げるか、原料や製品の生産削減まで規制に含めるかなどが焦点になる。
プラスチックは軽くて使い勝手がよいがゆえに世界中に広まり、長持ちする半面、分解されずに蓄積する。便利さとごみ問題は、裏腹の関係にある。
問題解決には、再利用やリサイクルはもちろん、使用量を減らすことが必須だが、経済や生活に大きく影響する。今のままでは消費者がプラスチックを使わない選択ができる余地は限られ、大幅な削減には使い捨て製品の規制などの対策が必要となってくる。
国際交渉で検討すべきことは目標策定、削減方法、途上国への支援、条約義務の実施手段など盛りだくさんだ。生産規制と言っても、原料まで含めるか、特定の素材や使い捨て製品などに限定するのか、プラスチックに含まれる有害な添加物をどうするか。調整は容易ではない。
会合に先立ち、日本はノルウェーなど対策に力を注ぐ国で作る「高い野心連合」に参加を表明。会合では、環境省担当官がアジア太平洋地域の理事に選ばれた。交渉に主体的に関われる立場を生かし、汚染ゼロに向けて主導権を発揮してほしい。自国の事情に固執せず、生産の規制策の調整も含め、実効性ある対策の実現に努めるべきだ。
からの記事と詳細 ( (社説)プラごみ条約 主体的立場で削減策を:朝日新聞デジタル - 朝日新聞デジタル )
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