さっそくですが、問題です。
プラスチックは「ごみ」だと思いますか?それとも「資源」でしょうか?
答えは「両方」です。
多くの自治体では「プラスチック製の容器包装」は資源として回収する一方、不要のハンガーなどの「プラスチック製品」は自治体によって「ごみ」とするか「資源」とするか判断が分かれています。
こうした中、仙台市は4月からプラスチックの扱いを大転換。これまで「家庭ごみ」だったプラスチック製品の資源回収を始めました。
どうして今?背景を探りました。
(仙台局記者・藤岡しほり)
【“プラ”はぜんぶ資源に】
今月3日、仙台市内のごみ集積所。中身いっぱいの袋を手にした人が次々とやってきました。袋の中身は「プラスチック資源」です。
仙台市ではこれまで、プラスチック資源の回収はマークの付いた「容器包装」だけでしたが、今月から、ハンガーなど不要の「プラスチック製品」も新たに回収を始めました。
仙台市廃棄物企画課 向井晃之課長 「分別を徹底して、ごみを減らす取り組みに協力してほしい。分別回収することで地球温暖化対策につながるので、仙台市として進めていきたい」 |
【減らない家庭ごみに“秘策”】
なぜプラスチック製品の回収が始まったのか。背景のひとつに仙台市のごみが減らない現状があります。
こちらは仙台市民1人1日あたりのごみの量です。2008年の家庭ごみ有料化で、翌年には大きく減ってますが、その後は横ばいの状態が続いています。
令和3年度の仙台市民1人1日あたりの家庭ごみの量は465グラム。市の目標は令和12年度までに400グラム以下にすることですが、まだ届いていません。
そこで目を付けたのがプラスチック。仙台市の家庭ごみのおよそ15%はプラスチックが占めています。これをリサイクルできればごみを大幅に減らせると考えたのです。
仙台市廃棄物企画課 川村優果主事 「これまで焼却処理していたプラスチック製品も、資源として回収してリサイクルに回すことになるので、家庭ごみの量が減ることを期待しています」 |
【“分別楽になった”という住民も】
庄司利信さん・美智子さん 夫妻
住民はどう受け止めているのか、市の委嘱でごみ減量の取り組みに協力している庄司利信さん夫妻を訪ねました。
さっそく分別の様子を見せてもらうと、お菓子の袋やハンガー、ちりとりなどを赤い袋にいれている途中、ケースに入ったCDをどうするか、悩んでいました。
庄司利信さん 「CDをどうしたらいいか迷いました。以前、プラスチック資源に長靴を入れて間違えたことがあるので。まだ迷うときはありますね。ただ、これまでよりプラスチックで出せるものが多くなったので、分別は楽になったと思います」 |
さらに家計の負担軽減も期待しているそうなんです。というのは、仙台市では家庭ごみの指定袋は「中」の大きさで10枚270円。一方、プラスチック資源の指定袋は10枚160円。家庭ごみより110円安いプラスチック資源の回収が増えれば、家計への負担が軽減できるのではないかと話していました。
【課題はコスト 1億3000万円負担増に】
課題もあります。これまで容器包装のリサイクルにかかっていた費用は年間およそ9億円。新たにプラスチック製品も含めた回収をすることで、1億3000万円ほど負担が増えると見込まれています。
物流用のバレット
固形燃料
回収したプラスチックは物流用のパレットや固形燃料に生まれ変わります。しかし、追加費用をまかなうには足りません。コストを下げるためにリサイクルでできた商品を自治体が販売するなどの方法も考えられますが、環境省の担当者はNHKの取材に対し「自治体が販売するとなると、売り先は公募しなければならないなど、また別に費用と時間がかかってしまい現実的ではない」と話していました。
リサイクルしないで燃やした方が負担が少ないというのが現状です。これではなかなかリサイクルも進みません。
【全国のわずか3% プラ製品回収進まず】
他にも課題はあります。
プラスチック製品の回収は去年、法律によって自治体の「努力義務」になりましたが、現状ではあまり進んでいません。県内では仙台市のほか、同じく4月から回収をスタートさせた名取市や岩沼市など、あわせて5つの市と町だけです。東北6県をみてもこの5つとなっていて、全国の市町村でもわずか3%にとどまっています。
まだ始めていない自治体に話を聞いてみると、市町村それぞれの事情がありました。
ある市の担当者からは
「市内に1000近く集積所があり、プラスチックの回収方法が変わることを
周知するだけでも時間と費用がかかり、すぐには対応できない」という声。
また、ある町の担当者は
「回収しても委託する業者が近くにない。
回収量も多くないため引き受けてもらえない可能性もある」と話していました。
【自治体の負担、減らせるか】
廃棄物の問題に詳しい専門家は、プラスチック製品の回収をほかの地域に広げるには、自治体の負担をどうするかが大きな課題だと指摘しています。
東北大学大学院 齋藤優子准教授 「費用負担は重要なポイントになると思います。プラスチックを資源化する枠組みに手をあげている自治体がいたら、補助や国のバックアップが重要になりますし、それが自治体の取り組みを始める動機にも繋がっていくのではないでしょうか」 |
【編集後記】
私も仙台市に引っ越してきて1年。プラスチックであれば、すべてまとめて出せるようになってよかったとは思っていましたが、取材を進めるまでは、リサイクルには大きなコストがかかることは知りませんでした。プラスチックをリサイクル「する自治体の負担」は「重く」、「しない自治体の負担」は「軽い」と言うのでは、リサイクルは進まず、環境への負荷はいつまでたっても変わりません。プラスチックの回収を自治体の「努力義務」とするからには、国には自治体の対応に大きな差が出ないよう、よりきめの細かい対応をセットで考えてほしいと思います。
仙台放送局記者
藤岡しほり
2022年入局
くらし・経済取材担当
白石市出身
着なくなった洋服は捨てずにリユース
からの記事と詳細 ( プラスチックはごみ?資源? | 知っトク東北|NHK - nhk.or.jp )
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