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Monday, April 10, 2023

社説:広がるごみ屋敷 孤立対策の視点欠かせぬ - 毎日新聞

 大量の物品やごみがあふれ、近隣住民の迷惑となる「ごみ屋敷」が広がっている。高齢化や孤立化が進む現代社会では、誰もが当事者になりうる問題だ。

 環境省の調査で、過去5年間に全国で5224件確認されたことが明らかになった。実数が把握されたのは初めてだ。

 東京都が880件、愛知県538件、千葉県341件と都市部が多い一方、高知、三重両県でも200件を超えている。そのうち、行政の介入などで改善した事例は半数にとどまる。

 当事者は、若い世代から高齢者まで幅広い。貧困にさらされる若者、認知症や病気を持つ高齢者が目立つ。

 ごみと認識しながら高齢や多忙のため廃棄できない。精神的な理由から不必要なものを手放せない。生活意欲が衰えて身の回りのことができない。当事者の事情はさまざまだ。

 敷地外へのごみの崩落や悪臭・害虫の発生、火災の危険性もある。だが、当事者が「ごみではない」と財産権を主張すれば、第三者が処分することは難しい。

 法律や国の制度がない中、自治体が個別に取り組んでいるのが実態だ。

 条例で行政代執行による撤去を定めている自治体もあるが、悩みを抱える当事者へのケアを欠いたままでは、再びごみがたまる。

 横浜市は、根本的な解決を目指す取り組みを進める。条例に「福祉的観点から支援を行う」と明記し、廃棄物の部局でなく福祉担当が所管する。

 行政に加え、民生委員など地域住民も協力して、当事者の悩みに耳を傾けながらごみ解消を図る。担当者は「時間も人手もかかるが、本人の合意を得ることを最優先に考えている」と話す。

 当事者の多くが地域で孤立している事実も忘れてはならない。周囲が気付いたときには深刻な状況に陥っている例も多い。

 単なるごみ問題として扱うのでなく、国や自治体は孤立対策の視点を持つことが欠かせない。

 政府は2021年、孤独・孤立対策担当相を置き、専門部署を設けた。関係省庁と連携し、当事者への支援を主導することが求められる。

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