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Tuesday, August 9, 2022

海洋プラごみ 回収難しい「厄介者」 身近な対策で減少 - 産経ニュース

海洋プラスチックごみは生態系に影響を与えている

私たちの身の回りにあふれているプラスチックは、軽くて丈夫なため多様な製品に使われ、さまざまな場面で生活に役立っている。だが役割を終えてごみになると、分解が困難な厄介者になってしまう。特に、海洋に流れ込んだプラスチックごみは回収が難しく、生態系への悪影響のほか、有害物質を運んで魚介類を汚染する懸念も指摘され、地球規模の大きな課題となっている。

800万トン 1年間に発生する量

石油から製造されたレジ袋や食品容器、ペットボトルなどのプラスチック製品は、消費者の使用後、大量のごみになる。一部がポイ捨てや回収もれで屋外に放置され、川などを通じ海に流れ込む。これが海洋プラスチックごみだ。世界で年間約800万トンが生じ、南極や北極、深海底などあらゆる海で確認されている。

海岸に打ち上げられたプラスチックごみ(米海洋大気局提供)

海の鳥や魚がからまって傷つき死ぬなど、生態系への悪影響が確認されている。また船舶の航行や漁業を妨げたり、景観悪化で観光に打撃を与えたりするなど被害は多岐にわたる。

27倍 世界と比較した日本周辺の個数

厄介なのが、紫外線や波の影響で大きさ5ミリ以下に細片化したマイクロプラスチックだ。小魚、貝類、甲殻類など小さな海洋生物が餌と間違えてのみ込み、消化管が傷ついたり、栄養を取れなくなったりする。

海水中に含まれるポリ塩化ビフェニール(PCB)や有機塩素系の殺虫剤DDTなど、有害物質を高濃度で吸着する性質があり、これらによる汚染も懸念される。小さな生物がより大きな生物の餌となる食物連鎖という関係から、有害物質が大型魚などの体内に移り濃縮される可能性がある。

マイクロプラスチック(海洋研究開発機構提供)

マイクロプラスチックは世界中の海にあるが、黒潮上流の東アジア諸国のプラごみ排出量が多いため、日本周辺の海水中の個数は世界平均の27倍。海洋研究開発機構の有人潜水調査船「しんかい6500」の探査によって、房総半島沖の水深約6000メートルの深海底で高密度な「海洋プラごみ墓場」が見つかり、生態系への影響も確認された。

2050年 新たな汚染ゼロめざす

日本政府は事態を重くみて、令和元年の20カ国・地域(G20)大阪サミットで、32(2050)年までに海洋プラごみによる新たな汚染をゼロにすることを目指す大阪ブルー・オーシャン・ビジョンを提案。以後も世界中に呼びかけ続けた。

現在は約90カ国・地域がビジョンを共有し、プラスチック利用の削減や回収・再利用への取り組みが広がっている。レジ袋有料化やプラスチックストローの利用中止、ホテルのプラスチック製アメニティーグッズ削減、海洋プラごみを再生したボールペン発売、内容量が同じでもプラスチック使用量が少ないスリム包装の開発など、企業の動きも活発だ。

もちろん、個人レベルで可能な取り組みもある。環境省では「プラスチックの利用削減や海への流入の防止などを日常的に意識することが大切。海辺のプラごみ拾い活動への参加など、身近で自分にできることから取り組んでみてほしい」などと呼びかけている。(伊藤壽一郎)

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