使い古した漁網を回収し、別の新しいナイロン製品に-。「海と生きる」をスローガンに掲げる気仙沼市が、漁網の廃棄ゼロを目指すプロジェクトに取り組んでいる。豊かな海の保全は持続可能な開発目標(SDGs)にも掲げられている。恵みを次世代につなぐため、漁業者と共に深刻化する海洋プラスチックごみ問題の改善を図る。(気仙沼総局・鈴木悠太)
取り組みは「地域と一緒に!漁網のみらいプロジェクト」。世界自然保護基金(WWF)ジャパンなどと5月に始めた。関連して市内で展示会もあり、漁網から生まれ変わった買い物籠やクーラーボックスが並べられた。
WWFジャパンによると、世界で年間推定1100万トンの海洋プラごみが生じ、うち50万~115万トンが漁具となっている。生物や水質が汚染され漁獲減少の恐れがあり、捨てられた漁具に魚が絡まる「ゴーストフィッシング」(幽霊漁業)も生態系に悪影響を及ぼすという。
「漁業者の意識は高まっている」と、プロジェクトを担う市水産課の吉田浩義さん(48)は語る。市は2019年に「海洋プラごみ対策アクション宣言」を採択。漁業者が漂うごみを引き揚げたり、市が浜ごとに廃棄漁具を回収したりする取り組みが浸透してきた。
漁網の再利用には課題も多い。網に付属した金属や重りの撤去に加え、除塩が必要。網の構造は漁法やメーカーによって異なる。回収には漁業者の協力も欠かせない。
ただ、無料で漁網を回収・再利用するサイクルを確立すれば漁業者にもメリットがある。市は漁法ごとに漁網の特徴や廃棄量などを調べ、回収マニュアルの策定作業を進めている。
手始めに、再利用しやすそうな秋サケの漁網をペレット化する試験を予定する。吉田さんは「水産業を基幹とする気仙沼にとって海洋プラごみ削減は喫緊の課題。漁業者や市民と一丸で臨む」と話す。
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