福岡県宗像市の約60キロ沖に位置する世界遺産・沖ノ島に発泡スチロールやペットボトル、漁具などが押し寄せ、打ち上げられている。「神宿る島」として上陸が禁止され、交代で島を守る宗像大社の神職が回収して本土に持ち帰るが、手が届かない消波ブロックの間に漂着ごみはたまる一方だ。
島一帯は対馬暖流の恵みを受け、豊かな漁場が広がる。そこに膨大なごみが流れ込み、漁業や生態系を脅かす。「宝の海は今や、ごみの海。災害レベルです」。九州大大学院工学研究院の清野聡子准教授(海岸生態工学)は警鐘を鳴らす。
沖ノ島は島全体が信仰の対象で、古代の
上陸前に海中で身を清める
20年近く前から海洋ごみの問題に向き合う清野准教授は、2000年頃からアジア経済の急成長に伴い、東シナ海から対馬暖流に乗って運ばれてくるようになったとみる。
だが、沖ノ島などで回収されたペットボトルの製造地を分析すると、日本、中国、韓国がほぼ同数。「まず日本がゼロにしなければ、他国に何も言えない」。同県糸島市などで「海辺の教室」を開き、海洋環境の重みを説く。
宗像市鐘崎の漁師権田幸祐さん(37)らは、海岸清掃や分別に取り組んできた。だがより深刻なのは、永久に海面や海中を漂い続けたり、海底に沈んだりするごみだ。潮目に沿った全長数キロの「海ごみベルト」を少なくとも3か所で確認。クラウドファンディングで資金を募り、その回収にも乗り出す。
「日本カブトガニを守る会」の会長も務める清野准教授。「生きる化石」のカブトガニは、海洋環境のよしあしを判断する指標生物だ。「漁師も同じ。漁師が生きられない海になれば、気候や人間社会の安定にも影響を及ぼす」と警告し、こう呼びかける。
「私たちの代でかつての海を取り戻せるとは限らない。だが、『最後の闘い』の覚悟で努力する価値はある」
写真 足立浩史
浦上太介
文 大塚晴司
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