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Friday, November 26, 2021

神宿る島、宝の海救え「災害レベル」押し寄せるごみと闘う - 読売新聞

 福岡県宗像市の約60キロ沖に位置する世界遺産・沖ノ島に発泡スチロールやペットボトル、漁具などが押し寄せ、打ち上げられている。「神宿る島」として上陸が禁止され、交代で島を守る宗像大社の神職が回収して本土に持ち帰るが、手が届かない消波ブロックの間に漂着ごみはたまる一方だ。

 島一帯は対馬暖流の恵みを受け、豊かな漁場が広がる。そこに膨大なごみが流れ込み、漁業や生態系を脅かす。「宝の海は今や、ごみの海。災害レベルです」。九州大大学院工学研究院の清野聡子准教授(海岸生態工学)は警鐘を鳴らす。

 沖ノ島は島全体が信仰の対象で、古代の 祭祀さいし 遺跡と豊かな自然が残る。

 上陸前に海中で身を清める 禊場みそぎば にも、外国語のラベルがついたペットボトルやプラスチック片が漂着する。陸地には微細なマイクロプラスチックもたまっていく。

 20年近く前から海洋ごみの問題に向き合う清野准教授は、2000年頃からアジア経済の急成長に伴い、東シナ海から対馬暖流に乗って運ばれてくるようになったとみる。

 だが、沖ノ島などで回収されたペットボトルの製造地を分析すると、日本、中国、韓国がほぼ同数。「まず日本がゼロにしなければ、他国に何も言えない」。同県糸島市などで「海辺の教室」を開き、海洋環境の重みを説く。

 宗像市鐘崎の漁師権田幸祐さん(37)らは、海岸清掃や分別に取り組んできた。だがより深刻なのは、永久に海面や海中を漂い続けたり、海底に沈んだりするごみだ。潮目に沿った全長数キロの「海ごみベルト」を少なくとも3か所で確認。クラウドファンディングで資金を募り、その回収にも乗り出す。

 「日本カブトガニを守る会」の会長も務める清野准教授。「生きる化石」のカブトガニは、海洋環境のよしあしを判断する指標生物だ。「漁師も同じ。漁師が生きられない海になれば、気候や人間社会の安定にも影響を及ぼす」と警告し、こう呼びかける。

 「私たちの代でかつての海を取り戻せるとは限らない。だが、『最後の闘い』の覚悟で努力する価値はある」

 写真 足立浩史
    浦上太介
  文 大塚晴司

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